CESが終わり、モバイルに特化したイベントでは最大規模のMobile World Congressに向けた動きが始まる。王者のサムスンは昨年と同じく、直前に米サンフランシスコでイベントを開き、最新のフラッグシップを発表すると予想される。しかし来たる5G時代にどうやって覇権を維持するのか、戦略はまだわからない。

5Gスマホで54%のシェアを持つサムスン

 CESでCoolPadが安価な5Gスマホを発表しようと、TCLが猛攻をかけようと、王者はサムスンだ。5G対応機種は2019年に発表済み。会期中に出したプレスリリースでは、2019年に発売した5G対応スマートフォン5機種の合計の出荷台数が670万台に達したこと、5Gスマートフォンではシェア53.9%であることをアピールした。

 タブレットでも3月までに「Galaxy Tab S6 5G」を韓国で発売予定。初の5Gタブレットになるとのことだ。なお、CESではAIロボット「Ballie」やキーボードが話題となったが、スマートフォンでは「Galaxy Note 10 Lite」も発表している。

 気になる次期Galaxy(名称は従来どおりなら「Galaxy S11」だが、「Galaxy S20」が濃厚なようだ)については、5G対応は間違いないだろう。カメラは4つ搭載とも言われている。

 なお、5Gスマートフォン市場だが、宿敵のアップルはまだ5G対応機種を出していない。ファーウェイは各ブランドで5G対応機種を発表しているし、シャオミも5G機種を持ち、2020年に10機種以上のスマートフォンを発表することも明らかにしている。アップルは2020年に5G機種を出すと予想するアナリストもいるようだ。

サムスンは8年目、ノキアの14年を超えられるか?

 サムスンがノキアを上回り、携帯電話市場で最大手となったのは2012年のこと。iPhoneが2007年に発表したのち、サムスンが初代の「GALAXY S」を発表したのは2010年のことだ。ノキアがシェアトップを(ほぼ)維持してきた期間が1998年から2012年までの約14年なので、サムスンの8年はまだまだだ。それでも移り変わりが激しい業界で8年は長い。その間、「Galaxy Note 7」のリコールなどあったものの、ブランドを維持しつづけているのだ。

 運も味方したのかもしれない。2018年にアップルを超えて世界第2位まで上り詰めたファーウェイだが、この1年は米中貿易戦争の影響でグローバル市場ではネガティブなイメージも付きまとう(だが本国では好調だとか)。サムスンにとっては(ファーウェイ端末がまだ一般的ではない)米国市場の足場固めなど、時間をもらえた格好になった。

 最新のデータ(IDCが集計した2019年第3四半期のスマートフォン出荷台数)では、サムスンのシェアは21.8%、前年同期から1.5ポイントアップした。2位はファーウェイの18.6%、3位のアップルは13%。ファーウェイは中国での安価なモデルの人気が主な要因で、シェアを4ポイントアップ、アップルは0.2ポイント下げた。

経験の時代、サムスンの戦略は?

 スマートフォン市場全体が緩やかに成熟に向かい、以前のような成長率は期待できない。(半導体の市況がかんばしくないこともあるが)サムスン全体の業績も決して明るくないようだ。同社が先に出したガイダンスによると、第4四半期は収益が34%マイナスとなる見通しという。なお、サムスンは4四半期連続で収益が前年同期から減少しており、第4四半期もマイナスとなれば5四半期連続となる。

 一方で朗報もある。ブランド戦略は実を結んでいるのだ。

 米国、英国、日本、インド、ドイツ、ブラジルの6ヵ国のコンシューマーを対象に2019年にIHS Markitが行った調査によると、スマートフォンのブランドとして「サムスン」と「アップル」の合計の顧客ロイヤリティは69%とのこと。内訳は出ていないが、おそらくアップルが最大だろう。アップルとサムスンを除いた残りのベンダーは33%、業界平均のブランドロイヤリティは53%という。IHS Markitによると、アップルもサムスンも「これまで使っているから」というのが、ブランドロイヤリティ(同じブランドの機種を買う)の最大の要因とのことだ(https://technology.ihs.com/620238/smartphone-brand-loyalty-is-rare-beyond-apple-and-samsung)。

IHS Markitの資料より

 スマートフォン市場が変化を見せ、5Gでは唯一の主役ではなくなる中、サムスンの戦略は何か? CESで基調講演を行なったサムスンのコンシューマー・エレクトロニクス部門CEOのHyun-suk Kim氏は、「経験の時代」について語っている。

 消費者はモノではなく経験(コト)にお金を費やすようになり、同社もそれに向けた開発を進めていくという。経験を支援するソフトウェアという点では、以前からサムスンの課題である(そして、ノキアの課題でもあった)ソフトウェアやサービス事業をどのように膨らませていくのかに期待したい。


筆者紹介──末岡洋子


フリーランスライター。アットマーク・アイティの記者を経てフリーに。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている