「虫の目」と「鳥の目」で自社事業を捉える

朝倉:特にプロダクト・マーケット・フィット前の初期段階においては、競合を含めた周囲の競争環境に惑わされることなく、ユーザーをしっかり見てプロダクト開発を進めることの重要性がしばしば強調されます。ただ、「とにかくユーザーのことだけを考えて、プロダクトを作っていこうよ」とユーザー・ファーストで考えることと、競合にしっかり目配せをするということは、実はあまり矛盾しない気がしています。

たしかに、まだ顧客にプロダクトが受け容れられる前の初期段階で、過度に競合を意識しても仕方がない。それよりも、目の前のお客さんの信頼を勝ち得るプロダクトを実現することに全精力を注ぐべきでしょう。けれど、プロダクトが徐々に成長してくると、当然、顧客開発の視点に加えて競争を意識する必要が出てくる。

要は「鳥の目と虫の目の両方が必要ですよ」という話なんだと思います。初期段階のプロダクトを1回転するゼロイチのタイミングには、「とにかくお客さんのことを見ましょう。プロダクトのことだけを考えましょう」という、虫の目が特に重要。一方で、どこかのタイミングで少し引いて、「発展していくと、絶対ぶつかるところが出てくるよな」という視点は、頭の片隅に入れておかないといけません。

両方の視点を1人で持てる人がいれば、それでいいのかもしれませんし、もしも自分は虫の目が得意で、鳥の目を持ちづらいという人なのであれば、外から鳥の目が得意な人を入れるなどして、チームとして補完する必要があるのでしょう。

村上:チームの補完と、ガバナンスの話になると思います。虫の目と鳥の目の両立をさせたり、適切なタイミングで視点を切り替えたりすることを社内リソースだけで成立させるのは、簡単ではありません。

「うちはプロダクトを作っているから、財務戦略は関係ないじゃないですか」という言葉を聞くこともあるんですが、必ずしもそうではありません。プロダクト開発だって、開発や営業などの、全く別のファンクションを持った人が、相互に広い目でフィードバックすることで、良いものを作ろうとしているはずです。それと同様に、会社の立ち位置についても、虫の目と鳥の目をセットにして考えたほうがいいでしょう。