競合認識の差は、ビジネス進化への想像力の差

朝倉:僕はピーター・ティールが好きなんですが、彼は「とにかくニッチで敵がいないところで圧倒的なシェアを取れ」と言いますよね。その通りだと思うんですが、一方で、それで終わってしまったら、中小企業で終始してしまいかねない。ニッチから事業の幅を横に広げよう、スケールさせようと思ったら、事業構築の過程でどういった参入障壁を作っていくのかをセットで考えないといけない。そこがよく考えから抜けがちなところなのかなという気はしますね。今、目立つ競合がいなくても、3年後にも同じだとは限らない。

小林:競合に対する捉え方の違いは、ビジネス進化への想像力をどこまで持てるかにもよる気がします。ニッチビジネスとして見るなら、目の前で直接ユーザーを取り合っている相手だけを競合と捉えますが、「ビジネス展開すればこれくらいの大きなマーケットにアドレスできるんです」という話になってくると、違うレベルの競合が出てきます。そこに対する想像力があるかないかの違いなのかもしれませんね。

村上:例えば、BtoB向けのサービスで考えてみると、最初はUIがいいからという理由で使ってもらうことができても、広がっていくと結局セキュリティなど、インフラ側の投資の勝負になってしまうといったケースはよくありますね。

開発・マーケティング・販売等の諸々が、結局どこかで資本勝負になるのだとしたら、財務戦略上、大きな資金投下をしないといけません。ですが、当初のサービス設計の段階の思想のままで、とりあえずUI、UXを良くして売ることに特化してしまうと、投資戦略や開発戦略、財務戦略が後手に回り、競合に対する障壁が作りきれなくなってしまいます。