アマゾン・ドット・コム、マイクロソフト、グーグルの米IT大手が火花を散らすクラウドビジネス。マイクロソフトに猛追される業界王者のアマゾンは大阪への投資を拡大し、金融業界の本格攻略に乗り出した。(ダイヤモンド編集部 大矢博之)
クラウドの王者が反撃開始だ。米アマゾン・ドット・コムのクラウド事業「AWS」は、2021年初頭に大阪を通常リージョンに拡張すると1月20 日に発表した。
膨大なデータ処理を可能にするクラウドの“頭脳”となるのはデータセンターだ。その所在地をリージョンと呼ぶ。AWSは18年2月に大阪に「ローカルリージョン」を開設した。ただデータセンターは1カ所で、利用できる機能にも制約があった。
一方、競合の米マイクロソフトの「アジュール」は14年に東日本と西日本に通常リージョンを開設。米グーグルの「グーグルクラウド」も19年5月に大阪で通常リージョンの正式運用を始めた。災害時への備えなど、東京・大阪の2拠点で同等のクラウドサービスを活用したい場合、AWSは選択肢から外れる状態になっていた。
AWSは今回、大阪エリアで新たに2カ所のデータセンターを開設。東京と同等のサービスを提供することで狙うのは、金融業界の顧客拡大だ。
「大阪が通常リージョンになることを受け、勘定系を含む全業務をAWSの利用可能範囲にすると社内で機関決定した」
こう語ったのは、20日の会見に登壇したソニー銀行の福嶋達也執行役員だ。13年末からAWSの利用を始め、周辺業務などを担う社内システムは、19年秋にAWSへの移行を完了した。AWS活用で運用コストを40~60%削減でき、新たなインフラの導入にかかる時間も半分以下になったという。