スマートスピーカー、AIアシスタントの分野ではアマゾンに後れを取ってきたグーグル。起死回生の策として打ち出してきたのは、強みである「検索」を生かした戦略だ。マイクロソフト、グーグルでエンジニアとして活躍し、現在は複数の企業で技術顧問を務める及川卓也氏が、今年開催されたグーグルの開発者向けイベントの中から特に注目した、最新のビジネス戦略を紹介する。(クライスアンドカンパニー顧問 及川卓也、構成/ムコハタワカコ)
エンジニアとの共生で
ここまで発展してきたグーグル
ITコングロマリットとして今や誰もが知る大企業のグーグルは、ここ2~3年、スマートスピーカーの「Google Home(グーグルホーム)」や、そこに搭載されるAIアシスタントに力を入れています。
実はスマートスピーカー、AIアシスタントは、アメリカでも日本でもアマゾンが先行する分野。アマゾンのAIアシスタント「Alexa(アレクサ)」とそれを搭載した「Echo(エコー)」は2014年11月に初めて米国で登場しています。これはグーグルホームが発売された2016年11月より2年も早いタイミングで、その後もこの分野では、グーグルはアマゾンを追う形です。
グーグルは例年5月ごろ、Google I/O(グーグルアイオー)という開発者向けのカンファレンスを開催し、エンジニアにその年のグーグルの戦略や新しい技術を紹介します。グーグルにはエンドユーザー向けに直接提供されるプロダクトもありますが、その多くの機能はエンジニア向けに展開されています。作り手であるエンジニアとグーグルとが、開発者のエコシステム、プラットフォームの上で共生することで、グーグルは発展してきました。
スマートフォンのOSである、Android(アンドロイド)が分かりやすい例です。アンドロイドをエンジニア向けに展開し、スマホアプリをたくさん作ってもらうことで、スマホ、OS、アプリからなるエコシステムが完成します。これができなければプラットフォームに魅力がなくなり、魅力のないプラットフォームのためにはデバイスも開発されなくなります。やがて、使えるデバイスのないプラットフォームにはアプリも開発されない、という負の循環に陥るでしょう。
マイクロソフトもスマートフォンを出していましたが、現在は撤退しています。これは、デバイスが少なかったことも理由ですが、アプリケーションの品ぞろえが少なかった点も背景にあるのです。逆に正の連鎖が働けば、「アプリがたくさんあるからデバイスを買う」「デバイスが売れているのでアプリをつくる人が増える」状況が生まれ、プラットフォームは発展していきます。
さて、その開発者向けのカンファレンス、グーグルI/Oではこの2~3年、グーグルホームやアシスタントを前面に打ち出す傾向にあります。2019年5月に開催された今年のカンファレンスでも、グーグルアシスタント向けの機能がいろいろと発表されていました。その中でも「なるほど」と思った戦略が、検索機能を活用したものでした。