今回、口座の入出金を管理する銀行のITシステムの“本丸”である勘定系に、いよいよAWSが入り込むことになる。また勘定系のアプリケーションとしては富士通の勘定系サービス「FBaaS」を採用する見通しだ。
AWSの大阪リージョン拡張を受け、ソニー銀行の他にも、三菱UFJフィナンシャル・グループや三井住友信託銀行、関西電力、コニカミノルタ、ジェーシービーなどが大阪リージョンを積極活用することを表明した。
一方、アジュールは勘定系の顧客を既に獲得している。北國銀行は19年11月、勘定系システムの稼働基盤にアジュールを採用すると発表。日本ユニシスの勘定系システム「バンクビジョン」をアジュール上に移行し、21年の稼働を目指している。
北國銀行の杖村修司専務は、「生き残るコスト体質に変わらねばならない」と説明。IT部門の年間コストは、25年までに現状から30億円減の250億円が目標。加えてコストの内訳も、従来は保守が8割で開発が2割だったが、今後は開発投資に8割を振り向けることを掲げている。
シンガポールの調査会社カナリスによれば、18年の世界のクラウド市場のシェアはAWSが31.7%で、アジュールは16.8%。ただ、売上高の前年比の成長率はAWSの47.1%に対し、アジュールは82.4%と猛追している。
ある大手企業の幹部は、「多彩な機能を備えたAWSは、自由に組み合わせてシステムをつくりたいエンジニア向き。一方アジュールはサービスの“パッケージ化”を充実させ、『クラウドを活用したい』という漠然とした要望の多い日本市場で勢いがある」と語る。
大阪への積極投資で、反撃に出たAWS。20年はクラウドの覇権争いが激化する一年になりそうだ。