ただ、ワークマンの場合、店舗の9割超がフランチャイズ契約である。このため、店の売り上げが下がるような直販は、加盟店オーナーの収入減につながるため、ECに注力する戦略は打ちにくかった。

 実際に、自社EC強化の影響を懸念するオーナーは存在する。フランチャイズ店舗が同社の急速な成長を支えている現時点では、ECと店舗を共存させることが大前提になる。

 また、直販が増えてくると、本部でその在庫を抱えなければならないという新たな負担も発生する。発送のための倉庫の確保や人件費もバカにならない。

 今回、ワークマンは、「『店舗在庫』による『店舗受け取り』通販の次世代 Click & Collect 型(オムニチャンネル)」と打ち出している。つまり、ECサイトのリニューアルは、店舗在庫と本部の在庫を一元化するシステムの導入が最大の目的だ。

 この「クリック&コレクト」の仕組みは、海外では「ZARA」を有するインディテックスが成功させた手法であり、世界のアパレルの潮流でもある。

 オンラインで注文を受け付け、EC向けの在庫を引き当てるのではなく、店の在庫を引き当て、店で受け取る。あるいは、店から出荷する仕組みだ。ECと店舗の境目がないのである。

 ZARAの店舗が広いのは、そこが「在庫の倉庫」でもあるからだ。また、ユニクロが中国で爆発的に成功した背景にあるのが、このシステムの導入だ。アパレルの勝ち組は、このリアルとネットの二本立ての仕組みで、ネット通販専業企業を凌駕しているのである。