800人の予定が応募意向は1500人!?
早期退職の募集期間を前倒しで短縮
「澤田社長の年頭挨拶で、会社への危機感は増幅し、1月には1500人近い社員が応募意向を示しているといいます。経営サイドは急遽、応募しても『適用否認』という判断を下す場合があることをアナウンスし始めた。適用否認をされた社員は、辞めても早期退職金2000万円が支払われないというのです。初めは辞めろといい、今度は辞めるなら退職金は払わないと脅し始める。社内はパニック状態です」(ファミマ管理職社員)
当初、早期退職の募集期間は2月10日~21日の予定だった。ところが1月28日、ファミマは突如、この期間を前倒しし、2月3日~7日と期間も短くすることを社内にアナウンスした。会社と社員のリストラを巡る“骨肉”の攻防は、既にスタートしている。
なぜ、これだけ応募が殺到する事態となったのか。
その一因は、ファミマ社員の間で、親会社である大手商社・伊藤忠商事に会社が支配されていることへの嫌悪感が広がっているからだという。中でも反発を招いたのは、リストラを発表した昨秋と同時期に流したカフェラテのCMだという。
CMはファミマがコーヒーマシンに200億円を投資したことをアピールする内容。ファミマが“コーヒー推し”をする理由について、前出の社員は、「伊藤忠から高値のコーヒー豆を仕入れなくてはならないからだ」と語り、「むしろ他商品のテコ入れが必要といわれているなか、伊藤忠のためにコーヒーを売ることに誰もがジレンマを感じていた」と嘆く。
こうした環境下で、リストラを発表する一方で、コーヒーマシンに200億円投資するCMを知らされたファミマ社員の間で、一気に厭世観が広がったというのだ。「だいたい『200億円投資』をアピールするCM自体が、消費者心理を全く分かっていない“商社ノリ”。CMを打っても、店内コーヒー売り上げで先行しているセブンとはいまだ個店・日販で5000円前後の差があり、『追いつけ、追い越せ』という目標にはほど遠い結果に終わった。リストラへの配慮もありCMはすぐに中断され、結果、大失敗に終わった」(ファミマ社員)
ファミマ広報は、「CMは中断ではなく、予定通りの期間の放映だった。コーヒーの売上高は前年同期比で110%を超えるなど、好調に推移している」との見解を示した。
さらに追い打ちをかけたのが、1月に発表された組織改編だった。
ファミマ新卒社員第一号世代だった副社長や、ファミマを支えてきたプロパー役員らが一斉に「店舗再生本部担当」に異動させられたのだ。
店舗再生本部は、ファミマ本社が店舗を直接運営すべく新設された部門だ。フランチャイズ加盟店が事業継続を断念した場合、ファミマ本部がその店を引き受ける。要するに、フランチャイズのなり手のない“お荷物店舗”を預かって、社員自らが店長や店舗スタッフとなって運営するのだ。
「ファミマの役員のほとんどが伊藤忠出身者で固められ、プロパーである副社長はコンビニビジネスの根幹であるフランチャイズビジネスから外された。店舗再生本部はいわば“島流し人事”で、この会社は完全に伊藤忠の支配下にあるということが白日の下に晒された」(ファミマ管理職社員)
16年にサークルKサンクスと統合し、セブン-イレブンに次ぐ業界2位に躍り出たファミマ。統合直後は約1万9000店あった店舗数は、現在約1万6500店まで減った。業界3位のローソンは1万4600店。今後、ファミマの店舗数減少は加速するとみられており、業界3位転落というシナリオも現実味を帯び始めた。