ハロウィンの仮装も強いられれば負担になることは間違いないが、自らが積極的に楽しむ姿勢で挑めばおのずと景色も変わって、それなりのものになるのであろう。バレンタインも同様で、Aさんの楽しむ姿勢が「義理チョコを用意する面倒さ」といったネガティブな要素を小さくし、「感謝の意を伝えられる機会であり、ついでにゴシップも聞けて面白い」と、ポジティブな部分を大きくクローズアップするに至っている。

横行する政治的義理チョコ
裏・義理チョコの誕生へ

 Bさん(38歳女性・既婚)の勤める会社は、Aさんと比較して保守的である。福利厚生はしっかりしているが、先の例になぞらえるなら昭和然としたいかめしさがある。「対外的な見栄えを考慮して各種ハラスメントを取り締まりたいが、社風が古いので現場にて根絶するのは難しい」といった雰囲気で、バレンタインはというと、Aさんの会社とは異なった理由で大いに盛り上がっていた。

 権力を持つおじさんたちがチョコをもらうことを大変喜んだため、女性社員は贈らざるを得なかったり、義理チョコの配布によって社内の自分の立場を良くしようと努めた。前者は義理チョコの強制、後者は義理チョコの政治的利用である。

「女性社員はあげるのが当たり前だったので、『じゃあ、いっそのこと男性全員にあげる前提で女性もまとまろうよ』と。いつ頃からか定かではありませんがそういう慣例になっていました」(Bさん)

 開き直って「男性全員に渡す」を事務化してしまえば、「チョコを用意する・渡す」という作業量自体は増えるが作業効率は増すし、「誰に渡すか」を考える必要がなくなるため、総合的に見れば確かに負担は減るかもしれない。

「そこで課ごとにまとまって、課長から一般社員まで、年齢や役職に応じて金額を決めて、それに相当するチョコをあげていました。『課の女子全員からのまとめた義理チョコを課長に1つ、主任に1つ…』という感じです。

 チョコは割り勘ですが、これも女性社員の年齢・役職に応じて負担の割合を変えて、上の人ほど負担金額が大きくなる形でやっていました」

 極めて事務的、かつ公平である。ここまで義理義理然としたチョコとなると個人的感情や臆測、邪推が介入する余地はなく、血が通っていない清潔感がある。

 しかし話はこれだけで終わらない。誰もが平等にチョコをあげる・もらう状況下にあって、誰かが誰かにもうひとつ追加でチョコをあげたらどうなるであろうか。そう、その義理チョコにはこの上なき特別感が付与されるのである。目端の利く女性社員がこのツールを利用しない手はなく、社内で仲良くしておきたい相手に“特別な”義理チョコを渡して己の心象を良くしようと試みる。これが義理チョコの政治的利用である。