ユニバーサルミュージックがオーディオ・音楽ファンに向けて展開している「ハイレゾCD 名盤シリーズ」に、ポピュラー・ヴォーカル編(9タイトル)と、モータウン編(5タイトル)が加わりました。価格は3080円。第1弾は1月15日に発売済み。第二弾は2月26日の発売予定です。

 ポピュラー・ヴォーカル編は、ナット・キング・コール、イヴ・モンタンやコニー・フランシスなど、著名なシンガー達のベストアルバムからなる9タイトル。ジャズボーカル、シャンソン、オールディーズ、スタンダード・ポップスなど、時代を超えた名曲・名唱の数々を高音質で楽しむことができます。音源は、国内のオリジナル・アナログ・テープを基にして制作した“2018年DSDマスター”を、従来のハイレゾCD同様、一度352.8kHz/24bitに変換したのち、MQA化して収録しています。

 モータウン編は、モータウン・レコードの大黒柱と言われた、スティーヴィー・ワンダー、マーヴィン・ゲイ、ダイアナ・ロス(ソロとシュープリームス)、そしてマイケル・ジャクソンのベストアルバムからなる5タイトル。全て米国のオリジナル・アナログ・テープを基にした2019年DSDマスターを352.8kHz/24bitに変換した音源が収録。

 なお、ポピュラー・ヴォーカル編とモータウン編はともにハイレゾ未配信の音源となります。

 ちなみに、「ハイレゾCD」とは過去記事にもあるように、一般的なCDプレーヤーで再生すると44.1kHz/16bitの“CD音源”。MQA対応のDACを経由すれば最大352.4kHz/24bitの“ハイレゾ音源”として再生できる特殊なCDなのですが、このCD再生(44.1kHz/16bit)とMQA再生(352.4kHz/24bit)ではどう違って聞こえるのか、聴き比べできる機会を設けていただきました。いち音楽ファンとしても、とても興味深い試聴体験ですので、心して挑もうと思います。

スティーヴィー・ワンダー全盛期の名曲をセレクト

 試聴曲はモータウン編のスティーヴィー・ワンダー「ベスト・コレクション」からオーヴァージョイドとレゲ・ウーマンの2曲をセレクトしました。まずは再生方法から。今回はリッピングし、ポータブルプレーヤーとヘッドホンを組み合わせた再生としました。

 その際は、FLACなどロスレス形式で取り込む必要があります。そこで、自前のMacbook AirにCDドライブを接続しハイレゾCDを挿入。フリーソフト「XLD」でFLACとAIFF両方の形式でリッピングをおこない、MQA対応プレーヤーである「Astell&Kern SP1000」にコピーしました。FLACファイルのほうは、リッピング後に「MQA TagRestorer」というソフトにドラッグ&ドロップをすることで、MQAファイルに必要なメタタグ情報を付加できるので、その手順を踏みました。

 SP1000で実際に試したところ、AIFFファイルのほうは44.1kHz/16bitの音源、FLACファイルのほうは352.4kHz/24bitのMQAファイルとして認識されました。

 5年前に作ったFitearのカスタムイヤホンと、趣味のDTMでモニター用として愛用しているSHUREのヘッドホン「SRH1540」を用意して試聴の開始です。

ディティールの差で、曲の印象に変化が

 まずはオーヴァージョイドから聞いてみます。この曲の大きな特徴は、小石を水面に落とした音、草を踏む音、小鳥のさえずり、コオロギの鳴く音などの自然環境音を、リズム楽器として使用していることです。ピアノやアコースティックギター、ストリングスが織りなす音空間と一緒に、美しい歌メロをサポートします。 

MQA音源として認識されています
44.1kHz/16bitのAIFF音源として認識されています

 最初に44.1kHz/16bitから聞きましたが、充分に気持ちの良いサウンドです。森の中の湖畔で木漏れ日を浴びている気持ちの良い風景が頭に浮かびます。

 しかし、352.4kHz/24bitで再生すると、いつもと違う感覚を覚えました。リズム楽曲として使われた環境音が、24bit化により周囲に埋もれず独立して聞こえてくるので、曲がリズミカルに感じるのです。特に埋もれがちだった草を踏む音も、バックビートとして気持ちの良いグルーブを作っていきます。スティービー・ワンダーが鍵盤の前で歌いながら体をゆらしているあの感じです。

 ボーカルや各楽器の存在感もアップするので、アレンジの妙を今まで以上に感じる事ができました。スティービー・ワンダーが考えた本来の曲のカタチってこれなのかなと思うと、ファンとしてワクワクしてきます。

スティーヴィー・ワンダーのおいしさを満喫

 次曲はレゲ・ウーマン。この曲はスティービー・ワンダーの70年代3部作と言われるアルバムの最終章となる不朽の名作「ファースト・フィナーレ」からの一曲です。このころのスティービー・ワンダーは、多くの楽器を自ら演奏した、多重録音中心でアルバム制作をしていたのは有名な話です。当時注目を集めていたシンセサイザーの導入など、サウンド的な冒険を進めていた時期でもあります。

 そしてこの曲もご多分に漏れず、楽器の主役はシンセベースです。ステレオ空間の中で、中央にシンセベースが分厚く鳴り響き、その後方左側にドラム、同じく後方右側にパーカションが定位。リズムを刻みながら曲がスタートします。途中からギターと生ピアノ、エレピが、後方中央に現れて、本当の主役スティービー・ワンダーのボーカルがシンセベースの前に陣取ります。

 この曲の特徴は、この様に独特と言える各楽器の定位の仕方です。分厚いアナログシンセベースがセンターで存在感を発揮している中、それぞれの楽器が埋もれることなく、どこまで分離して再生できるかをポイントに聴き比べてみました。

 結論から書くと、44.1kHz/16bitでも充分楽しめます。試聴している再生環境のクオリティが高い事もありますが、各楽器がそれぞれの存在感をしっかり聞かせてくれます。

 それでも352.4kHz/24bitで聞いた時に、曲のファンクネスがグッと増したのは驚きでした。24bit再生により解像度が増して、シンセベースに埋もれがちだったバスドラの音圧が、耳に届くようになりビートが明確になったのです。各楽器の立ち上がりも今まで以上にわかる様になり、それぞれの定位も明確になった事も理由の一つです。ダイナミズムがわかりやすくなって、間奏から終盤にかけて、ハープやピアノが徐々に熱い演奏になっていくところも楽しく聴くことができました。

 今回の試聴でわかったこと。それは音が良くなる事で、その曲の印象が想像以上に変わるという点です。聞き慣れた楽曲が今まで気づかなかった顔を見せてくれて、フレッシュな気持ちで向き合えます。音楽ファンのみなさんには、アナログレコードの楽しさや、ストリーミングの利便性に加えて、高音質再生の楽しさもぜひ体験して欲しいと思いました。

 MQA対応プレーヤーも増えている今、普通のCDのプラスアルファの金額で購入できるハイレゾCDは、ある意味お得と言えるかもしれません。試してみる価値は充分にありますよ。