「20世紀アートを切り開いたスゴい作品」で考える、私たちの知覚の「ざんねんな現実」

さて、みなさんが選んだ結果を見てみると、最も多くの人が選んだのは、作品③や作品⑥のようですね。作品③を選んだ人たちに、「なぜ選んだのか」を尋ねてみましょう。

「目鼻立ちが正確で、一瞬で誰を描いたのかがわかる」
「再現度がすごい。髪の毛・まつげ・眉毛の1本1本まで描いてある。黒目のなかの光っているところもかなり好き」

「鉛筆の使い方がすごくうまい。影が上手に描けているから、顔の輪郭とか鼻とかが立体的に見える」

あなたは何番の絵を選びましたか? そのとき、なにを基準にして「すばらしい」と判断しましたか?
それが、いわば「いまのあなたが持っているものの見方」です。しかし、もしそれとはまったく異なる「ものの見方」があるとしたら……?

「20世紀アートを切り開いた絵」は本当にうまい?

いったん「自画像」から離れ、ここからはあるアーティストによるアート作品を1つ取り上げていきたいと思います。
20世紀のアートを切り開いたアーティスト」と称されるアンリ・マティス(1869~1954)の作品です。

いまから見ていくのは、1905年に発表された《緑のすじのあるマティス夫人の肖像》という絵です。これはマティスの今日の評価を生んだ、代表作ともいえる作品の1つです。キャンバスのサイズは縦40.5センチ×横32.5センチ。わりと小型の作品で、油絵具で描かれています。
みなさんには「自画像」を描いてもらいましたが、マティスはこの絵で「妻の肖像」を描きました。
では、さっそくその作品を見てみましょう。