北京市のアップル直営店。新型肺炎を受け、アップルは中国の直営全店を2月9日まで休業に。ぽつんと椅子に座る従業員も、マスクで防御している Photo:Kevin Frayer/gettyimages

中国の湖北省武漢市から始まった、新型コロナウイルスによる肺炎のアウトブレーク。事態は沈静化するどころか、経済への打撃が日に日に顕著になっている。(ダイヤモンド編集部 杉本りうこ、竹田孝洋、高口康太[特任アナリスト])

「震災とは異なり、影響範囲を特定すること、操業停止期間を予測することが非常に困難である」──。

 スマートフォン需要で撮像素子半導体の販売が好調なソニー。4日には今期業績の上振れ予想を発表した。その裏側で今、かつて経験したことのない難局に直面している。理由は中国発の新型コロナウイルスによる肺炎(新型肺炎)。冒頭の言葉は、ソニーの新型肺炎対策本部が資料の中で社員に示した、事実上の“緊急事態宣言”だ。

ソニーは非常時計画を発動

 ソニーは4日までに、全社レベルで事業継続計画(BCP)を発動している。この計画は大規模災害やテロ事件などで、事業を続けることが極めて困難になった際、企業存続のために発動するもの。ソニーは過去に、東日本大震災やタイの洪水などでも発動している。計画自体を策定していない企業が多い中、ソニーの速やかな対応は、危機管理のお手本といってよい。ただ今回は、これまでの大災害での教訓が必ずしも通用しない。その理由は、「事態が予測困難である」という一点に尽きる。

 予測困難になる要因の一つは疫学的なものだ。新型肺炎の中国での累計感染者数は4日までの5日間で2倍に膨らみ、2万4324人に達した(中国国家衛生健康委員会の発表)。目に見えないウイルスが指数関数的に広がる状況がいつ沈静化するのか、医療関係者でも予測は至難だ。

 もう一つは人為的な要因だ。感染者は31省・自治区・直轄市の全てで発生した。中国政府は感染拡大防止の目的で、1月24日からの旧正月休暇を、全国的に2日まで延長(本来は同30日まで)した。さらに上海市や広東省、江蘇省、浙江省などの主要な地方政府は手厚く9~10日まで、感染状況が最も深刻な湖北省は13日までとそれぞれ独自に延長している。

 休暇中、企業活動は基本的にストップする。電子・電機、自動車、機械などあらゆる産業の生産拠点が集まった中国が、2~3週間にわたり機能停止するのだ。感染拡大の勢いがとどまらなければ、さらなる休暇延長も否定できない。製造業のサプライチェーンが複雑に絡み合った21世紀に、この事態がどんな連鎖反応を起こすのか。視界は極めて不良だ。