新入生も新入社員も、必ずしなくてはならないことがある。自己紹介だ。実はこれ、簡単なようで難しい。いかに短い言葉で、自分のことを覚えてもらうか。うまくいけば、いきなりクラスのヒーローになれたり、ビジネスでチャンスを呼び込んだりできるかもしれない。
ダイヤモンド社より『コピーライターじゃなくても知っておきたい 心をつかむ超言葉術』を刊行するコピーライターの阿部広太郎氏にも、新人時代にこの課題が与えられた。
頭をひねって46本のコピーを考えた阿部氏。しかしクリエーティブディレクターが選んだ1本は意外なものだった。

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新人コピーライターに出された課題
「自分の広告をつくりなさい」

このお題が僕を含む新人コピーライターに与えられた。
制作した広告ポスターは、自己紹介も兼ねて、社内のフロアに掲示される。これからはじまるコピーライター生活。先輩たちに自分の存在を知ってもらえるのはとても心強い。覚えてもらいたい、その意気込みは強くなるばかりだった。

新人育成担当のクリエーティブディレクターが事前にコピーをチェックしてくれる。
その打合せに向けて考えはじめたものの…
あの時、自分のことをコピーで表現するなんて、果たしてそんなことができるのだろうかと、一抹の不安が頭をよぎったこともよく覚えている。まずは、自分の特徴を書き出していく。
これまで経験した出来事を思い出す。また、仲の良い友人にも僕がどんな風に見えているか教えてほしいと聞いて回った。
箇条書きにするとこのように整理できた。

・アメリカンフットボールをやっていたので体が大きいこと
・社会人1年目は人事配属で、切り拓くように異動してきたこと
・安心感があり話しやすく人当たりがいいこと
・言葉の仕事をしたいという強い気持ちがあること
・何事にも猪突猛進に取り組む姿勢があること

これが自分の「伝える内容」のもとになっていく。
1年間の優れた広告が掲載されている、図鑑のように重量感のある「コピー年鑑」のページをめくりながら、こんな風に書けたらいいだろうかと、見よう見まねで、1本ずつ書き上げる。
打合せの場に持ち込んだコピーは、46本だった。
1本ずつ、クリエーティブディレクターに見せていく。
意図を説明しながらテーブルに紙を置く。緊張して額に汗が流れていくのを感じる。
プレゼンし終わって、クリエーティブディレクターが、すべての紙を集め、トントントンと机で整えていく。そこから改めて、1枚ずつ素早く見ていく。これはある、これはない、と瞬時に分けていく。
結果、◯が4個、◎が1個だった。
ここに30本を紹介する。先程の特徴を持った新人コピーライターである。
あなたがコピーを選ぶ立場だったらどのコピーを選ぶだろうか?

汗も、恥も、文字も、たくさんかきます。
誰よりも手を動かす若手でありたい。
情熱とか嫌いな人には、悪夢の男です。
クマさんみたい。
それって、安心感があるってことですか。
体は大きいけれど、態度は小さいのです。
最後の足掻きをみてください。
倒れる時は、前のめり。
見た目だけで採点しないでください。
いまのところ、あきらめの悪さだけは、勝負できそうだ。
てづくりのあべこうたろう。
無駄にいい声を手に入れました。
松岡修造がライバルです。
もしもし、あべくん?
「はじめまして」から、すぐ仲良くなれる。
考えながら猪突猛進。
ただの汗かきから、頭に汗をかける奴へ。
真正面から、逃げません。
すべては終わった後の、ガッツポーズのために。
小さな縁を、大きくします。
情熱が、道を切り拓いてきました。
入社2年目ではなく、人生23年目すべてで勝負します。
夢をたくらむ時に、いい顔をします。
どんな強敵でも、体当たり。
阿部広告太郎。
どんよくあべこう。
総理大臣にはなれない。スポーツ選手にもなれない。
でも、心を動かす、日本代表になります。
誰よりも基本を大事にする男。
こころのつながりが、僕のエンジン。
「走れコウタロー」より、走る広太郎です。
万歳三唱だけは一人前。