選ばれたのは、たった
7文字のコピーだった

改めて読み返して思うことがある。ここの一文字を削り出して短くしたいとか、ここは平仮名じゃなくて漢字にしたいとか、過去の自分にあれこれ言いたくなる。
くすぐったいし、まじまじと見返すことに照れもあるけど、あの時の一生懸命を知っているから、恥ずかしいけど、恥じゃない。
クリエーティブディレクターが◯をつけたのはこの4本だった。

◯情熱とか嫌いな人には、悪夢の男です。
◯てづくりのあべこうたろう。
◯もしもし、あべくん?
◯どんよくあべこう。

そして、「これが良いね」と◎を付けてくれたのがこのコピーだった。

◎阿部広告太郎。

「ありがとうございます!」
コピーが生き残ったことに安堵しながらも、内心、拍子抜けしていた。
こんなことを言うのも恥ずかしいが、自分自身の名前で何かできないかと考えてい
る時に思い付きで書き加えたものだ。
内心、僕が書けたかなと思っていたのはこの2本のコピー案だった。

「汗も、恥も、文字も、たくさんかきます。」
「情熱とか嫌いな人には、悪夢の男です。」

あなたにも見ていただいてわかったと思うのだが、コピーってこうした方が「ぽさ」が
出るのかなと、あれこれ、こねくりまわしもした。
でも結局、自分の名前を起点にしたものが選ばれたのだ。
クリエーティブディレクターは言った。
「一番大切なのは、君の名前を覚えてもらうこと。君の名前の『こうたろう』のこうの字が広告の『こう』なんだと伝えることは、覚えてもらえるから良いよ」
僕の書いた46本のコピー。選ばれたのはたった7文字のコピー。
キャラクター、容姿、印象的な出来事など、あらゆるアプローチで自分のことを伝えるコピーを書いた。
けれど、自分は相手に何を覚えてもらいたいのかという企てのないまま書いていたことに気づいた。


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