特集『会計&ファイナンス』の物語・第1話で、ハンバーガーチェーンのファストバーガーを財務の実態以上に褒め過ぎた記事を書いてしまった主人公の真弓は反省し、貸借対照表(BS)の理解を深めようとする。物語・第2話は、そんな真弓がある企業のBSの項目が大きく膨らんでいる異変に気付くところから始まる。
>>物語・第1話『決算書を理解せよ!新米の女性経済記者が命じられた初仕事』から読む
貸借対照表(BS)を
最低3年分見ることで気付いたこと
「BSチェック強化月間!」
「BSチェック100本ノック!」
真弓は会社の机の仕切りの壁にそう書かれた紙を張った。ファストバーガーの記事の失敗にいつまでも意気消沈していられない。BS読解能力を高めるために、取材の合間に企業の大小や業界を問わず、ひたすらBSをチェックすることにした。しかも、最低でも3年間は見るように心掛けた。
異変に気付いたのは、トヤマ織物のBSだった。同社は上場する小規模の特殊織機メーカーだ。トヤマのBSを見ていた真弓は、売掛金や受取手形が異常に膨らんでいることに気が付いたのだ。
何かおかしい。真弓は早速、トヤマの周辺取材を進めてみた。すると、トヤマの主力製品の小型織機を最近導入したという企業は思ったより少なかった。
3月に入ったとはいえ、まだ寒さの残るある日。東京郊外にあるトヤマの工場の近辺を取材していたときのことだった。ふと入ってみた飲食店の店主にトヤマの話題を振ると、意外な答えが返ってきた。
「以前は夜でも工場が稼働していて、工員さんがうちにもたくさん食べに来てくれたんだけどねえ」
そんな状態で売り上げを維持できるのか。やはり何かがおかしい。しかし、何がおかしいのか、それ以上は今の真弓には分からない。悔しいが、思い切って一人で浅倉を訪ねてみた。
「おやおや、どうされましたか」
浅倉の口調は、ファストバーガーの失敗の後、少し優しくなった気がする。真弓は、トヤマの売掛金や受取手形の膨らみと、取材で感じた異変を伝えた。
「なるほど……。なかなか良い着眼点ですね」
素直に褒めてきたことで、真弓は浅倉のことを「あれ? やっぱりいい人かも」と思った。
「あ、ありがとうございます。で、どんなことが考えられるのでしょうか」
「ふむ。こういう可能性があるかもしれません」と言うと、浅倉は説明を始めた。
売掛金や受取手形はまとめて「売上債権」といわれていて、販売先から代金の支払いを受ける前の債権を指す。これが膨らむということは、モノやサービスを売ったけれども、ツケ払いなどになっていて、まだ代金をもらっていない取引が多いということ。
そう聞くと、ずいぶんと気前のいい会社のようにも思えるし、簡単に現金化できるということで、売上債権は流動資産に計上される。だから、借金が増えているというわけでもない。むしろ、その逆だ。
「しかし、実はこれが異常に膨らむということは、粉飾決算の可能性もあるのです」
「え? 粉飾?」
どういうことか。驚く真弓に、浅倉は続ける。