そうはいっても最後は「個人」

岩瀬 人生100年時代において、僕らはすごく長く働きます。転職だってするでしょう。だからこそ、僕は「個対個の信頼」を大切にしているんです。
取引先においても、会社よりまずは人です。個人の人柄を見て、長いお付き合いをしたい。だから、会社間のトラブルがあった際に、会社のために取引先の担当者を裏切るといった行為は、長い目で見ると損だと思うんです。だってお互い転職して、立場も変わって、また人生ですれ違うこともありえるじゃないですか。

田端 そのとおりです。講演などでよく聞くんですが、「みなさん、会社と握手したことある人います? キスしたことある人います? 殴られたことがある人います?」
当然ですが、一人もいないんですよね。

岩瀬 いないでしょうね。

田端 つまり、「会社のために」とかみんな言ってますけど、会社は概念でしかないということ。会社に腹を立てたり、愛着心を持つこと自体が、僕には不思議なんです。
例えば、意に添わない配置転換や転勤の話があったとします。お世話になっている上司がやってきて「田端、会社のためなんだ。3年経ったら呼び戻すからここは辛抱してくれ」というシーンってサラリーマンにありがちじゃないですか。
僕なら、「会社のためじゃないです」と言います。本当に尊敬している上司であれば、「僕はあなたのためには3年辛抱します。その代わり、3年経ったら戻すというお話は、人と人との約束として覚えていてくださいね」と。

岩瀬 なるほど。本質的ですね。それでいうと、田端さんは会社員時代から「個の信頼」を積んでいる人だと思います。最終的には、会社より「個人」が問われるということなのですね。

田端 そうだと思います。

次回は、これからの時代のサラリーマンに必要な「プロフェッショナルであること」について語り合います。