「情報銀行の第一人者」が見通す個人情報のゴールドラッシュ――。特集『個人情報ゴールドラッシュ』(全6回)の最終回では、CRM(企業が顧客を管理)からVRM(顧客が企業を管理)へと移行する情報銀行の未来を読み解く。(ダイヤモンド編集部特任アナリスト 高口康太)
従来のCRM(顧客関係管理)から
Shared CRM、VRM(企業関係管理)へ
データビジネスの分野では世界に後れを取っていた日本だが、今、にわかに巻き返しが進んでいる。本特集で見てきた通り、ユーザーの同意を取り、なおかつ安全性にも配慮してデータを循環させる仕組みづくりが急速に広がっているのだ。
2019年に『情報銀行のすべて』を上梓し、情報銀行の第一人者であるNTTデータ金融事業推進部デジタル戦略推進部の花谷昌弘部長は、個人情報の広範な活用によってビジネスが激変すると指摘する。
従来型のCRM(顧客関係管理)においても、企業は顧客のデータを取得し、それをマーケティングに生かしてきた。しかし1社で把握できる情報には限界があり、本人確認が取れていない推定データという曖昧さも残る。情報銀行が普及し、複数の企業が提供したデータを組み合わせ、さらに顧客自らが提供したデータとも組み合わせる、こうしたShared CRM(共有された顧客関係管理)によって、過去とは比較にならないほど精度の高い消費者理解が可能となる。
さらにその先には個人が自らのデータを提供することによって、自分に本当に必要なサービスが向こうからやって来るVRM(企業関係管理)への道が開けている。まさに「Society 5.0」構想で描かれた「AI(人工知能)により、必要な情報が必要なときに提供される社会」が眼前に迫っているのだ。
ここからは、情報銀行の第一人者が見通すデータビジネスの近未来を具体的に見ていこう。