数がないので、そうするしかない。ただ私は、自分はもう感染しているかもしれない、と考えて行動しています。帰宅したらすぐシャワーを浴びて、自宅では自室に閉じこもります。勤務以外に外出はほとんどしませんし、家族とも家庭内別居状態。自分が無症状であっても、話をするだけでものすごく感染力の強いウイルスを撒き散らしかねないのですから、人から距離を置くしかありません。

――実際に医師など医療従事者の方で、感染して重症化した方はいますか。

 ER(救急患者の治療を行う部門)の医師で重症化した人が何人かいます。ICUに入って、人工呼吸器を繋がれています。

 ERが怖いのは、新型コロナに感染しているのかどうか分からない人が、別の理由で担ぎ込まれるのです。一応、病院駐車場に置いたテントの中で患者に簡単な検査をやって、発熱の有無などで振り分けるスクリーニングはしています。それでも新型コロナって本当に巧妙にできたウイルスで、症状がいろいろあって必ずしも事前に分からないんです。8~9割は高熱がなかなか下がらないパターンですが、頭が痛いだけで熱が全くないという人もいるのです。

 そしてERに担ぎ込まれる患者の場合、病院に来た時点ですでに意識がなくて、新型コロナの自覚症状があるかどうかなんて分からないケースも多分にあります。例えば先週は、胸をナイフで刺された患者が来ました。ギャングの抗争なのか、けんかなのか、刺されて意識を失っていました。傷を見るためにCTスキャンを撮ったところ、両肺にすりガラスのような影があった。それで初めて感染が疑われ、新型コロナだと分かりました。「激しい乱闘をする人が呼吸困難を併発しているわけがない」と、先入観で対応してしまう。そして、思いもよらず感染してしまう。ERの医師はそんなリスクを抱えているのです。

 もっとかわいそうなのは看護師です。看護師1人で患者10人を担当していたら、毎日50~60回はウイルスがある部屋に入らざるを得ない。解熱剤の投与だけでも、1人につき1日何度も投与に行くのですから。これでは感染のリスクは極めて高くなります。ですから医師は、できるだけ投与頻度の低い薬を使うなど工夫していますが、感染のリスクはけっこう高いのが事実です。

――米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)のファウチ所長が、「米国では最低でも10万人、新型コロナで死亡する」と予測しました。臨床の体感値で、この数字をどう思いますか。