第一財経写真:新華社記者、熊琦

新型コロナウイルスの世界的な大流行は、欧州へとその中心が移り、今後は米国やアフリカでの感染拡大が危惧されている。第一財経は中国最大の経済情報メディアで、2020年上旬、ネット上の単なる噂にすぎなかった「武漢における原因不明の肺炎のまん延」の裏付け取材を敢行し、12月末に報じたことでも知られる。その第一財経マガジン合併号特集に掲載された、武漢での肺炎まん延による混乱を詳細に報じたルポを、特別翻訳してお届けする。Vol.1は急増する患者とその対応に苦労する病院と行政の様子をまとめた。

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 入院が難しいのは、治癒率と収容治療率のアンバランスの結果だ。

 「2月5日、市の指揮部宣伝チームは多くのネットユーザーが、本人や家族、友人の助けを求める情報をネット上に投稿していることを確認し、33件については、患者はすでに適切に処置されたと発表しました」

 このニュースは2月6日付のWeChat公式アカウント「武漢リリース」に掲載されたものだ。このアカウントを運営するのは、武漢市人民政府新聞事務所である。

 2月5日の夜、72歳の陳令軍氏とその家族はコミュニティ委員会、市衛健(市衛生健康)委員などから何件もの電話を受けた。その中の一つは市紀委(市規律委員会)の、肺炎の状況を監督するチームからだった。彼らが電話をかけた理由は共通しており、陳令軍氏の孫が2月3日に新浪微博に投稿した「肺炎患者が助けを求めている」ということについて、詳しく事情を聞くためだった。

 その投稿には、陳令軍氏が発病から診断まで13日間が経過したが、入院治療の手配がなかなかできないという緊急状況が述べられていた。

 陳令軍氏は1月22日から発熱し、肺炎と診断された後、自宅隔離観察を求められた。しかしその後、医師の診察を受けるまでに長い時間、順番を待たなければならなかった。

 7日目(1月28日)にはウイルス性肺炎と診断されたが、核酸増幅検査はできなかった。そして11日目(2月1日)にようやくウイルス核酸検査が実施され、結果は陽性で、新型コロナウイルス肺炎と診断された。

 しかしその診断結果について説明を受けるまで、さらに二日も待たなければならなかった。最終的に症状が出てから15日目に指定病院で入院治療が受けられるようになった。陳令軍氏の危篤状態を逐一報告したこの微博は、1万4000回以上転送された。この間、陳令軍氏の最終的な診断報告もコミュニティ委員会に伝わり、入院手続きが進められた。