4期連続最終赤字の三陽商会。ところが、新型コロナウイルス感染拡大に伴う危機的な状況下で発表された「再生プラン」は楽観的な内容だった。再建をめぐり内輪揉めの様相を呈しており、「ガバナンスが機能不全に陥っている」と幹部が危惧する三陽商会の迷走の内情とは。(ダイヤモンド編集部 相馬留美)
4期連続赤字も「2年後の黒字化」を“約束”
楽観的な中山社長の「再生プラン」
「新たに策定した再生プランを確実に遂行するため、新しい経営体制は大江、中山のツートップ体制。2年後の黒字化をコミットメント(約束)する」
4月14日、三陽商会の2020年2月期決算発表の席上、中山雅之社長は自信満々にこう語った。
だがこの日発表された決算は、惨憺たるありさまだ。決算期を変更した変則期決算で14カ月もあったにもかかわらず、営業損益は前期のマイナス21.8億円からさらに赤字幅が拡大し、営業赤字は28.8億円。4期連続で最終赤字となった。
加えて、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、3月の店頭販売実績は全社で前年同月比56%。特に百貨店依存が強い同社の場合、百貨店の時短営業や店舗休業の影響は甚大で、百貨店チャネルは前年同月比49%にまで落ち込んだ。ECでは前年比125%を達成したものの、全社の売上高に占めるECの売り上げ構成比は12.7%(年間、通販含む)で、全体をカバーできるほど育っていない。
ところが、そんな苦しい状況下で発表された「再生プラン」は、楽観的な内容に終始しているように見える。三陽商会のある幹部はこう打ち明ける。
「再生プランは社員には秘密裏に立ち上げられた、執行役員以上の役職で構成された再生委員会が当初は立案していた。ところが、中山社長が再生委員会の案を蹴り、独自の再生プランをぶち上げた。今の三陽商会のガバナンスは機能不全に陥っている」
コロナという危機に対処しなければならない状況下で、三陽商会の内部では内輪揉めの様相を呈している。いったい何が起きているのか。