こうした現場の事情など、世間に通用しない。近隣住民はゼネコンに対し、「なぜマスクをしていないのか」と問い合わせてきたりする。ゼネコンは世間の目を気にして、特に労働基準監督署に目を付けられないよう、感染対策を講じている姿をアピールするために冒頭のように撮影し、「建前」の様子を収めた写真をホームページで公開したりする。実際はマスクを外して、人々が密接しているのだから、偽装である。

 現場では咳をしている者もたくさんいる。現場事務所で事務を担うある派遣社員は、顔が赤くて、息切れしている人が事務所にやって来たときに「熱はないですか」と聞いた。すると、「事務員さん怖いよ」と煙たがられた。

 この派遣社員は現場の実態に対し、恐怖心が頂点に達した。思い余って遺書まで書いた。書きながら涙が止まらなかった。

備蓄したマスクは有料販売
買いに来た職人は皆無

 職人のマスクは自分で準備することになっている現場が多い。マスクの入手が困難な中にあって、この現場は大量のマスクを備蓄している。ただし、それはゼネコン社員用。職人にはマスクを有料で販売することにしている。1日に何百人もの職人が出入りしているため、彼らに支給していてはすぐに在庫が底を突くからだ。

 職人への物販は、コロナ以前にも行われてきた。各現場でローカルルールが作られ、現場で使うトイレットペーパーや喫煙所使用者に喫煙者シールを買わせて、職人からカネを巻き上げるのだ。こうした悪習を知ってか、この現場でマスクを買いに来た職人は皆無だという。

 少なくとも、感染の疑いがある者を現場に入れないよう徹底すべきではある。多くの現場には、ゼネコン社員や職人などの入場者は毎日体温を測る規定がある。しかし、それも機能していないことも多い。工事現場事務所に勤める事務員が体温計を届け、検温を急かさない限り測ろうとしなかったりするのだ。

 最初の検温でコロナ感染の発熱症状の基準である「37度5分」以上の数値が出ても、うそをついたり何度か測り直して低い体温を出して申告したり、「自宅で測ってきた」という数値を報告したりするのだ。つまり虚偽の申告。これもまた偽装である。