一方、政策を実質的に立案する官僚は、多くが東京大学などの学部卒である。財務官僚の多くが東大法学部出身で、彼らは基本的にジェネラリストの行政官だ。一度は海外留学する機会を持つ人が多いが、学部卒が多いために留学では修士号取得にとどまり、博士号まで取得する人は限られる。もちろん政策について一定の専門性は持っているが、それは行政の経験に基づくものだ。官僚が作成する政策案は、理論的というより現行制度をベースにした現実的なものになる。

 一方、米国や英国など欧米の政府でも審議会はあるが、専門家が政策立案に関わる機会はそれだけではない。専門家は、若手の頃からさまざまなレベルでのポストに応募する機会がある。省庁では、政策の原案を練るところから多数の専門家が入り、先端の研究の知見が反映されることになる。

 また、官僚組織が終身雇用・年功序列でないことから、専門家は大学・研究所・シンクタンク等と省庁の間を何度も行き来しながらキャリアを形成していく。これを「回転ドア(Revolving Door)」と呼び、終身雇用をベースに省庁を退官後に官僚が民間に籍を移す、日本の「天下り」と対比されることがある。

 欧米のこの「回転ドア」は、大学と役所の専門家間で多くの「政策ネットワーク」が形成されることにつながる。また、省庁のポストには学会の推薦ではなく個人で応募する。そのため、学会に従順な専門家だけでなく、多様な学説を持つ専門家が政策立案に参画することになる。学説の間での「競争」が起こって政策案が磨かれ、政府の選択肢も増えることになる。

コロナ対策の司令塔「専門家会議」は
平時を想定して設置した?

 日本のコロナ対策と専門家の関係に話を戻そう。今回のコロナ問題で陣頭指揮を執る「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議」(以下、専門家会議)は20年2月14日、首相官邸の「新型コロナウイルス感染症対策本部」の傘下に設置された。

 その時点では、政府は事態をそれほど深刻に捉えていなかったと思われる。中国などからの入国禁止という強い措置を取ることはなく、感染拡大が過ぎ去れば、中国の習近平国家主席の国賓来日も予定通り行われ、東京オリンピック・パラリンピックも無事に開催できると考えていたはずだ。あまり、「有事」という感覚はなかったと思われる(第234回)。