多田 文化的に親和性があるかどうかを買収前に判断するのは非常に難しいことだと思いますが、どのように見極められているのでしょうか。

佐藤 おっしゃる通り、当社の経営上スコープに入っていないような、全く知らない会社を買収することにはリスクがあると考えています。だからこそ、当社がある程度の期間をかけて見てきた会社を買収する方がリスクは低いです。

 たとえばプロ野球の監督は、ライバルチームのことをよくわかっていると思います。チームの雰囲気はどうか、練習内容はどんなものか、選手の魅力や能力、欠点なども正確に把握しているはずです。一方で、プロ野球の監督が、プロバスケットのチームについて評価できるかというと、そうではないですよね。

 それと同じで、普段から関係のある取引先企業や、私たちと扱っている製品が近い事業を持ち競い合っている相手であれば、それまでの企業活動、開発した製品、サービスを見ることで、その企業の文化についてもイメージできます。そのうえで、最終的には経営者と直接会うことを大事にしています。お互いに価値観が合うかどうか、直感的な部分も重要ですね。

「言わないでも分かる」では分からない
企業理念や価値観は言語化するべき

多田 では、テルモが大事にしている価値観とは何でしょうか。

佐藤 企業理念として「医療を通じて社会に貢献する」を設立当初から掲げています。2019 年4⽉にグループ共通の価値観として「コアバリューズ」を制定し、Respect(尊重)・Integrity(誠実)・Care(ケア)・Quality(品質)・Creativity(創造⼒)という言葉に、私たちが大事にする価値観、行動指針を集約しました。

多田 なぜ、このタイミングで価値観を明文化されたのでしょうか。

佐藤 もともと、海外のグループ会社には自由に動いてもらうことで、市場を広げてきました。「遠心力」を頼りに成長してきたのです。それらのグループ会社とテルモ本社の間であれば「価値観」がぶれずに会話できます。テルモ本社側に暗黙知ながら基準があるからです。