台数や利益よりも
若いファンを作ることが大事

ソニー元副会長の森尾稔氏インタビューは東京・大崎にある社友=ソニーOB専用のオフィスで行った。静かな空間にかつてのヒット作や最新の製品が、さり気なく置かれていた Photo by Y.A.

――森尾さんがソニーの経営に関わっていた時代に比べ、今のソニーは厳しい企業間競争にさらされ、技術の差別化も難しくなっています。

 僕らの時代より、今の経営者は難しいと思います。その点でひとつ言えるのは、僕らの世代の「最大の貢献」が何だったか、ということです。

 ソニー最大のヒット商品としてウォークマンを指して、何億台も売れて利益を生み出した、と言う人があります。しかし本当に大事なのは、ウォークマンによって若い世代のソニーファンが生まれたことです。中学生なんかが競って、ウォークマンを買いたいと思ってくれたでしょう? その人たちは大きくなってからも、ファンで居続けてくれました。

 今のソニーは、かつてとはビジネス構成が大きく変わっています。ゲームソフトだったり、映画だったり音楽だったり。こういった事業で今の経営陣が力を入れているのは、リカーリング・ビジネス。つまり、製品を売っておしまいではなく、お客さんとずっと続くつながりを大切にしています。僕は、これはすごくいいことだと思います。

 ソニーというブランドには、若いファンを引きつけられるビジネスが常に必要です。ゲームのような若い世代が関心を持つ事業は、絶対に続けないといけない。現役の後輩たちと会うと、よくそういう話をしています。