供給量の過半が売れ残る過剰供給が慢性化
多産多死のゾンビがアパレル業界を脅かす
アパレル業界は過剰供給が慢性化して多産多死状態に陥っており、セールを繰り返しても2019年は年間供給数量の51.8%が売れ残った。大量に廃棄されたり、中古衣料としてアジアに輸出されたりしているから、エシカルでもサスティナブルでもない業界だ。
これは国内に供給された商品(98%を占める輸入品と2%の国産品)に限ったもので、商社や工場が日本向けに作って生産地の倉庫に積み上がっている在庫も合わせれば毎年、需要の2.5倍近くのアパレル商品が供給されている。
当然ながら、売れ残った在庫は流通段階の倉庫に積み上がっている。それらがオフプライスストアなど安売り店に流れたり、ブランドのデッドストックが人気を呼んだり、消費者のタンスからあふれる中古衣料も加わって新品の割高感が際立ち、アパレル業界は自分たちが作り出した過去のゾンビに脅かされている。
「タンス在庫100年分・流通在庫10年分」と揶揄されて新作品の市場が行き詰まったキモノ業界ほどではないにしても、そこに刻一刻と近付きつつあったのは間違いない。
多産多死の過剰供給は顧客にとっては選択肢が豊富になるものの、値引きや廃棄のコストが乗って割高な価格になるため、どうしてもセールやオフプライスに流れてしまう。それがまた値引きや廃棄を広げ、価格が割高になるというスパイラルに陥ってしまう。
こんなチキンレースをいつまでも続けられるはずがなく、誰かが強制的にリセットするしかなかった。そんなアパレル業界に、コロナパンデミックが引導を渡したのだ。