高付加価値商品はギャンブル性が高い
コロナ危機下は成功確率がゼロに近づく

 3点目は、ギャンブル性の高い、高付加価値商品を手掛けていることだ。

 高付加価値な商品ほど顧客を選び、企画から販売までのタイムラグも長い。このため利幅はあっても売り上げの予測が難しく、売れ残る確率が高い。逆に低付加価値な商品ほど顧客の間口が広く、前シーズンからの変化も小さいから売り上げ予測が容易で、売り切れる確率が高い。

 ハイリスク・ハイリターンなギャンブルか、ローリスク・ローリターンな安全投資か、という二択に見える。だが、前者がハイリターンを得る確率は極端に低く、後者がハイリターンを得る確率は意外に高い。ならば誰もが後者を選択しそうなものだが、安全な商品ほど類似品との同質化競争で値崩れしやすく、需給をうまく読んで機動的に動かないと利益が残らない。スキルがあれば額に汗する労働が報われる「ビジネス」だ。

 大多数がハイリスクでローリターンに終わる前者を志向するアパレルが絶えないのは、わが国のものづくり信仰もともかく、確率は低くても当たれば高収益と称賛をほしいままにできるからだ。

 確率論的にはギャンブルでしかないが、夢を追って突き進むアパレルが絶えない「ロマン」なのだろう。

 景気が良い時は高付加価値な商品を求める顧客が多く、ギャンブルの成功確率も高まる。だが、景気が陰ってきたところにコロナが直撃して必需品以外に目が向かなくなった今回のようなクライシスでは、成功確率は限りなくゼロに近づく。前述したように高付加価値商売の体質は逆風にもろく、クリエイティブなブランドやストアの破綻が広がると危惧される。

 どちらも商売だから好きにやればよいようなものだが、アパレル流通の行き詰まった実態を考えれば、コロナクライシスを契機に大規模な淘汰が進むと覚悟するしかない。