経営危機のまっただ中にある、半導体大手ルネサスエレクトロニクスの再建策に、一定の方向が示された。
米投資ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)が、ルネサスの第三者割当増資を約1000億円で引き受け、出資することを提案している。これが実現すればKKRはルネサスの経営権を握り、経営陣をすげ替えることも可能になる。
提案を受け取ったルネサスの親会社、NEC、日立製作所、三菱電機の3社と主力取引銀行は、詳細な条件も含めて協議に入る。
「もちろん前向きに検討する。これ以上、ルネサスにカネを出す気はない」。ある親会社の幹部はそう断言する。「3社ともこれ以上、支援をしないという方向性は一致している」(親会社関係者)のだ。
親会社3社はこれまで、巨額の資金をルネサスに注ぎ込み続けてきた。
日立と三菱電機の半導体部門を統合した、ルネサステクノロジ時代は資本金500億円に加え、増資引き受けで500億円を出している。NECエレクトロニクスが合流して、ルネサスエレクトロニクスになってからも、親会社3社が設立時に2000億円規模の出資をした。合計3000億円もの巨額資金がルネサスに工面されてきたのだ。
しかし、それでもルネサスは、統合によって膨れ上がった人員や工場の整理を思うように進められず、立ち直ることはできなかった。今年に入って再びルネサスに泣きつかれた親会社は、ついに追加出資を拒否。3社で約500億円の金融支援に留めた。
ある親会社の首脳は「KKRではなく、私がルネサスの経営陣を刷新したいくらいだ」と本音をのぞかせ、ルネサスを突き放す。
ついに再建策は事業会社から、投資ファンドの手に委ねられようとしている。
複数のルネサス関係者は「投資ファンドであれば、今までできなかった、経済合理性を優先した抜本的な構造改革を実現できる」と期待を寄せる。しかし、ファンドに経営を主導してもらわなければ立ち直れないのであれば、この結末が意味するのは事業会社としての敗北宣言だ。
ルネサスの経営ミスによる問題の先送りの代償として、親会社が出資というかたちでつぎ込んだ3000億円は、あまりに高い手切れ金となった。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 鈴木崇久)