過去に頓挫を繰り返してきた“日の丸半導体”構想に、新しいビジネスモデルはあるのか
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 ルネサスエレクトロニクス、富士通、パナソニックの3社が、半導体事業の統合を検討していることが明らかになった。官民ファンドの産業革新機構が出資し、家電製品やクルマに組み込むシステムLSI(大規模集積回路)関連の事業分野を切り出して、3月末までに設計・開発に特化した新会社の設立を目指している。

 システムLSIとは、デジタル機器の“頭脳”となる半導体チップのこと。日本の半導体メーカーは2000年以降、液晶テレビやデジタルカメラ、ゲーム機やクルマに使う高付加価値な半導体として、新しい成長エンジンに据えた。そこで各社こぞって1ヵ所当たり1000億円以上する最先端工場や、膨大な開発コストに投資を重ねたのだ。

 ところが同時期、米シリコンバレーでは画像処理や通信など得意分野の設計・開発に特化したファブレスと呼ばれるベンチャー企業と、巨額投資により、圧倒的なコスト競争力を持つ台湾などの受託生産企業(ファウンドリ)らが手を組み、分業方式で世界市場を制圧していった。

 そこで窮地に陥った日本メーカーの「開発部門」を新会社にまとめる。さらにルネサス鶴岡工場と富士通の三重工場、エルピーダメモリの広島工場も視野に、「生産部門」もまとめて“日の丸”で反転攻勢に出る──。

 産業革新機構はそんなシナリオを描いているというが、早くも“画餅”にすぎないと、疑問の声が上がっている。

 それは主目的が新会社の成長戦略より、赤字事業の切り離しにあるのではないか、との見方が広がっているからだ。

「“お金持ち”の産業革新機構が魅力的だから、各社とも呼び出しに応じている面があるのは否めない」と、交渉中のあるメーカー幹部は明かす。

 今期決算の見通しでは、各社とも半導体事業は最終赤字になる。パナソニックは今期、半導体事業に590億円のリストラ費用を計上し、開発体制の見直しや、工場の統廃合も進めている。一方、富士通については「半導体工場の減損処理のリスクを抱えている」(業界関係者)との指摘すらあり、早く重荷を下ろしたいのが実情だ。

 そこに降ってわいたのが冒頭のスキーム。「グローバルな競争力がないので、せめて工場閉鎖や人員リストラしたうえで、集中投資しないと勝てない」(大手電機メーカー幹部)というが、実際には稼働率の低い工場がそのまま“足し算”される可能性が残っている。

 日の丸半導体をめぐっては、過去に国家プロジェクトも含めて幾度も頓挫してきた。今回の統合案が、“延命措置”の性格を帯びるなら、その結果は数年先を待つまでもない。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 後藤直義)

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