エルピーダメモリ破綻で世間がメモリーに注目している間に、もう一つ大事な半導体、すなわちシステムLSIと言われる分野にも「末路」が迫っていることに、どれほどの人が気づいているだろうか。「即刻」対処が必要な状況にある。この分野に関する産業革新機構(INCJ)の動きと経済産業省の意向は、想像されるほど一体とは限らないが、いずれにせよ彼ら公的存在の動きが、民間半導体エンジニアたちの意欲と力を削ぎかねないのだ。(半導体産業アナリスト 川上 拓)

システムLSI再編に関する
産業革新機構案は疑問だらけ

 前回「ポスト・エルピーダの半導体産業」で既にシステムLSI再編成について、設計を含む全体論を包括的に述べた。その記事も参照願いたいが、今回は前回の全体論のうち、システムLSI分野の再編テーマに挙げられることが多い主要2工場、すなわちルネサスエレクトロニクスの山形セミコンダクタと、富士通セミコンダクタ・三重工場の問題に焦点を絞ろう。工場(ファブ)のほうが設計より大事という意味ではない。事態が一部急迫しているからだ。

 前回も述べたように日本経済新聞、朝日新聞による2月8日、9日報道によると、産業革新機構(以下、革新機構)は、上記2工場とエルピーダ広島工場を、米=アブダビ系のロジックファンドリーであるグローバルファウンドリーズ(GF)社と共同で、買収・統合しようとしているらしい。2月末のエルピーダ破綻とその後の入札等で、同案の行方には暗雲が垂れ込めているが、しかし革新機構はなおも大同小異の路線を狙っている模様だ。それがいかに素人発想でナンセンスか、その「実体的な根拠」は、前回述べたのでここでは繰り返さない。

 以下では、革新機構が頼りにするGF社自体の問題を指摘し、次いでシステムLSI系2工場である富士通三重(桑名市)とルネサス山形(鶴岡市)で、今、起きつつある新たな「光明」を示すことで、全体として革新機構案が、今やいかにナンセンスになっているかを指摘したい。