スピード感と柔軟性の欠如が
日本の存在感を低下させている
国際的に見て日本企業の存在感が低下している根本的な要因は、どこにあると思われますか。
高橋:「経営のスピード感・柔軟性の欠如」が最大の要因ではないでしょうか。
最近では「3つのD」という言葉でよく表現されますが、デジタル、ディスラプション(創造的破壊)、ダイバーシティの3つをいかに経営に活かしていくかをグローバル企業のCEOは常に考えています。
デジタルテクノロジーの急速な進化によって、さまざまな産業でディスラプションが起こる経営環境においては、従来の延長線上で経営判断するのではなく、トライ・アンド・エラーを続けながら、経営のスピードを上げていかなくてはなりません。そのスピード感と柔軟性で後れを取っていることが、日本企業の存在感を低下させている大きな要因だと思います。
酒井:たとえば、中国では政治的な発言についての自由度は低いにしても、経済活動に関しては非常に自由です。これは、国民性というか、人々のメンタリティに起因する部分も大きいと思います。
日本は規制が強いから新しいことができないという人がいますが、それも口実になっている面があって、それ以前の問題として誰もやっていないことにチャレンジしようというメンタリティが中国やアメリカの人たちに比べて弱いのではないでしょうか。
一例を挙げれば、EV(電気自動車)ベンチャーの旗手であるテスラがEVトラックなどの新規事業に積極的に乗り出す一方で、伝統的製造業の象徴であるゼネラル・エレクトリックがIoTを軸としたデジタル変革によってビジネスモデルを大きく塗り替えようとするなど、新旧問わず創造的破壊による成長へチャレンジする企業がどんどん出てきています。
高橋:日本人のメンタリティを変え、チャレンジする企業を増やすためにも、ダイバーシティを高めることは非常に重要です。均質性の高い日本の企業組織に、異なる国籍やバックグラウンド、才能、あるいは考え方などを持った人材をどんどん取り込んでいくべきだと思います。
日本の企業は業績が拡大して組織が大きくなるにつれ、安定性を求める志向が強くなり、次第に組織や人材が硬直化する傾向が見受けられます。
そうした硬直化を打破しない限り、変化の激しい時代に対応するスピード感も柔軟性も生まれず、市場からの退出を迫られるリスクが高まるばかりです。