経済的・社会的・文化的価値
3つの視点から未来像を描く
とはいえ、不確実性が高まっている時代に、どうやって自社の未来像を構想すればいいのでしょうか。
西村:未来のことなので、社内を説得できるような構想を描くのは簡単ではありません。そこでよくあるのが積み上げ型のアプローチです。ロジカルに見て、この市場は伸びていて、CAGR(年平均成長率)はこうなる、そのうちシェアは何%取れるから進出するんだと考えたりしますが、絵に描いた餅に終わることが多いですし、その先にイノベーションは生まれません。
スープストックトーキョーの遠山正道会長に以前伺ったのですが、商社勤務時代にいろいろ事業を起こす可能性があった中で、なぜ、自分たちは食べるスープの専門店をやるのか。それは「世の中の体温を上げる」こと。街角で女性がスープを飲んでホッとする、そんなシーンが東京にあることが世の中の温度を上げることなんだとおっしゃっていました。
それはある意味、〝志〟でもあります。誰もがそれぞれ、いろいろなことができたかもしれない中で、あえていまの仕事に就いているのはなぜか。それは、そこに何らかの想いがあるからです。
我々は、この想いや〝志〟を大切にしながら、みんなで未来を描いていくアプローチを取っています。みんなといっても、経営陣と次の経営を担っていくようなミドルマネジャーが中心となるのですが、彼らが個々に持つ想いを、適切なフレームワークに則って形に落とし込んでいきます。
栗原:これから起業するのであれば、リーダー一人が想いを形にしていけばいいでしょう。一方、すでに社員が何千人、何万人といる大企業で、経営トップがいきなりやって来てビジョンを示しても、ついていけない社員が出てきます。
そういう時には、ビジョンそのものをみんなでつくっていくことが必要になります。また、社長によってはリーダーシップのタイプが違っていて、必ずしも志を語ることが得意でない場合もあります。でも、仕事への想いは、絶対に皆さんお持ちです。
ただ、口下手でうまく表現できなかったり、コミュニケーションする時に優先順位を間違えてしまったりすることもあります。そうした場合は、我々のような外部の専門家が中に入って潜在的な想いを引き出し、洗練された未来像へと磨き上げるのも一つの方法です。