宮内庁に納める淀川のヨシで商品開発、大手企業も採用。持続可能な仕組みを築く

――御社の事業内容を教えてください。

塩田 地域の、そして日本の財産である、淀川の鵜殿のヨシ原に自生する「ヨシ」を使った商品開発・デザインを行っています。

宮内庁に納める淀川のヨシで商品開発、大手企業も採用。持続可能な仕組みを築く代表取締役塩田真由美氏。大阪府生まれ。銀行やデザイン事務所、和紙制作会社などの勤務を経て、2007年に和紙をコンセプトとしたカフェと和紙ギャラリーをオープン。14年にアトリエMayとして法人化し、地域資源のデザインをコア事業に再構築。

 ヨシとは川辺や湖畔などに生えているイネ科の多年草で、「葦」ともいわれ、古くから屋根やすだれの材料として用いられています。特に鵜殿のヨシは太くて弾力性があるので、雅楽器の材料に好適とされ、毎年宮内庁に納められています。

 このヨシから作った紙や、ヨシ繊維と綿を混紡した糸を使って、ストールや布巾、トートバッグ、折り紙などを作り、販売しています。ヨシ材は建築資材にも使われていて、大手ゼネコンに納入。大阪・関西万博の内装材にも採用していただいています。

――なぜこの素材に着目したのですか?

塩田 もともと私は和紙会社やギャラリーの仕事をしていて、2007年に独立し、大阪・交野市に和紙カフェをオープンしました。この店に、鵜殿ヨシ原研究所の小山弘道先生が訪れ、「ヨシを使った和紙を開発したので、販売に協力してほしい」と相談を受けたのです。

 当時、鵜殿のヨシ原は減少の一途をたどっていました。理由は国産品の需要が減少し、ヨシ原が放置されるようになったからです。

 ヨシは二酸化炭素を吸収して地球温暖化を防いだり、水中・土中の窒素やリンを吸い上げて水質を浄化したりする役割も果たします。販路を拡大し需要が高まればヨシ原を再生でき、地域貢献や環境保全にもつながります。地域資源を和紙の原料に使えることにも魅力を感じ、ご協力させていただこうと考えたのです。

――どのように販売協力を?

塩田 ペーパーレスの時代に和紙そのものを売るのは難しいので、インテリア照明や文房具などの商品を作ったのですが、なかなか売れませんでした。

 転機となったのは、12年に大阪商工会議所主催の展示会に出展したことです。これで「日本経済新聞」や大阪のテレビ番組で取り上げられると、大阪の企業に応援していただけるようになり、株主優待品や記念品などに採用していただけるようになりました。