デジタル・トランスフォーメーション
成功のカギ
デジタル・トランスフォーメーションを進めるパートナーとして、KDDIの独自性はどんなところにあるのでしょうか。
多くの方には、au携帯電話のイメージが強いかもしれませんが、もとをたどれば、固定電話や国際電話、移動電話事業に始まり、日本国内のみならず、海外との通信インフラを長年にわたって構築してきました。その過程で、さまざまな顧客企業のニーズに応え、最新鋭の技術に基づいたソリューションを提供してきたわけです。そのため、これまで培ってきた技術やノウハウ、そして独自のインフラネットワークには優位性があると考えています。2017年12月には「SD−WAN」(Software Defined Wide Area Network)サービスを開始し、固定電話やモバイル通信、インターネット、閉域網を組み合わせ、それぞれのメリットを活かしたネットワークを提供しています。必ずしも自社のサービスやプロダクトにこだわらず、AWS(アマゾン ウェブ サービス:アマゾンのクラウドサービス)やGCP(グーグルクラウドプラットフォーム:グーグルのクラウドサービス)など、顧客の予算やニーズに合わせて、ベストな組み合わせを提案しています。
また、顧客の課題に応じて、グループ会社とのパートナーシップを活用し、より解像度の高いソリューションを提供しています。2017年8月にはIoTプラットフォーム「SORACOM」を提供するソラコムを子会社化し、2018年1月には野村総合研究所(NRI)とのジョイントベンチャーとしてKDDIデジタルデザインを設立しました。NRIの戦略コンサルティング力とSI力、そしてKDDIの次世代ネットワーク・IoTプラットフォームの構築力など、双方の持つ強みを活かして、ビジネスのより上流から課題をとらえ、戦略立案から事業化、システム構築までを一貫して提供することができます。一方、より明確にやりたいこと、実現したいことが見えている企業に対しては、ソラコムのプラットフォームを活用し、最適化されたIoT通信をリーズナブルかつ安全に提供できます。また、IoTによって蓄積された膨大なデータを活用するなら、アクセンチュアとのジョイントベンチャーであるARISE analytics(アライズ アナリティクス)が、データ解析においてプレゼンスを発揮できるでしょう。
他にも、KDDIには先端技術開発やリサーチ、マーケティング、エンジニアリングなど各分野のグループ会社があり、さまざまなパートナー企業のサービスもあります。その中から最適な組み合わせを提供しています。
これからの時代において、デジタル・トランスフォーメーションを成功させるカギは何でしょうか。
まずは経営層など、経営の根幹を担う人が、どれほどの覚悟を持って推進していこうとしているかだと思います。これは当社の調査によるものですが、全国の社員数300人以上の企業の社員2440人に対して、「IoTによるデータ活用に取り組まなかった場合のリスク意識」を調査したところ、全体で約8割が「リスクがある」と回答し、なかでも本部長層では約9割が「非常にリスクがある」と答えています。また、トライアルも含めて実際にIoTによるデータ活用に取り組んでいる企業は全体のおよそ2割に留まっていますが、そのうち9割以上がマネタイズの効果を感じているのです。多くの企業が危機感を共有している中で、数少ないながらも実施に踏み切っている企業は、十分にその恩恵を感じています。すでに「やるか、やらないか」を決める瀬戸際に立っているといえます。
そして、デジタル・トランスフォーメーション成功のカギを握るのは、アジャイルによるスピーディで自律的な開発環境と、それを承認して任せられる組織です。そもそもスクラムという手法は、日本企業の「ワイガヤ」的な企業文化がアメリカ企業で再構築され、瞬く間に世界へ広がったものです。昔ながらのモーレツ社員のような働き方はいまの時代には適合しないでしょうが、同じチームで役職や権益を超え、膝を突き合わせてよりよいものをつくるという気概は、いまこそイノベーションを生み出す原動力になるのではないかと思います。
- ●企画・制作:ダイヤモンド クォータリー編集部