ビジネスパーソン写真はイメージです Photo:PIXTA

仕事を任せられる人の
離職を防ぐ効果的な方法

 仕事を確実に任せることができる部下は現場の核とも言える存在です。もし、辞めてしまうと大きな痛手ですよね。周りへの影響も大きく、下手をすれば、それが引き金となり退職の連鎖が起こるかもしれません。

 離職の原因の一つは、今の仕事にやりがいを感じなくなることです。とくに仕事ができる人材であれば、業務量が他の社員よりも多かったり、誰よりも良い営業成績を上げているのに昇給やボーナスの支給額が周りと差がなかったりなど、待遇面での不満が重なれば、転職を考えるのは当然です。

 仕事を安心して任せられる部下の離職を防ぐにはどうすれば良いのでしょうか?

 まずは、評価制度を見直し、貢献度にマッチした待遇に改善することが必須です。そして「よそ見をさせない」ことも重要です。転職サイトをチェックして情報を得たり、友人との会話で他社の状況を知ったりすれば、どうしても隣の芝生は青く見えてしまいます。

 ただ、他社よりも自社で働き続ける方が魅力的だと思えたら、よそ見をすることはなくなります。その一例をご紹介しましょう。

 かつて私がアパレル専門店チェーンに勤務していたとき、中堅社員を対象に米国の視察研修が行われていました。当時の米国のアパレル専門店チェーンは、最先端の技法を駆使した店づくりやマーチャンダイジングを行っていて、私たちにとっては憧れであり、手本となる存在でした。

 現地に行き、現場で現物に触れることができるその研修に参加することは、幹部社員への登竜門でもあったので、多くの中堅社員の目標でした。筆者も選抜メンバー入りを果たすため、脇目も振らずに日々の仕事に取り組んでいました。

 このような特別なイベントを用意しなくても、ことあるごとに、「次のステージに上がれば、どんな環境で働けるのか?」「どのようにやりがいを感じられるのか?」そして、「自分が成長できるのか?」について、会社が社員に対して具体的なキャリアプランを伝えていくことで、自社で働き続ける意義、良さを感じさせることは十分できます。

 部下はどのような未来を望んでいるのかを把握し、各自が望むビジョンを実現するためには「今の職場で、何にどのように取り組めばよいのか」を部下に考えさせる機会を作ることも大切です。日々の業務が、自分が目指すべき未来につながっていると思えれば、任された仕事に情熱を注ぐことができます。よそ見をしている暇がなくなるので、結果として離職を防げます。