次に、前田長官のオースティン出張に関し、国家公務員の出張は「出張命令」を受けて行うという形式を取り、出張命令に出張の趣旨目的、訪問地、期間などが記載されている。

「命令」であるので、出張後は復命が必要で復命書が提出される。復命書には当然のことながら報告書が添付される(国際会議の場合は公電の形式になり、在外公館発の公電が後日初出される。公電は通常、在外公館の職員なり出張に同行した外務省の職員なりが作成するが、筆者が作成し、外務省経由で在外公館に一旦送付し、丸々そのものが公電として返ってくるという奇妙な体験をしたことがある)。

 従って、当該「出張命令」の中身はどうだったのか、そして復命書の中身はどうだったのかが大きなポイントとなる。

SXSWの視察の名目で出張したのに
なぜ「当のイベント」に参加していないのか

 もっとも、SXSWの視察の名目で出張したのに、文春の記事にあるように、当のイべントの本番には参加もしていないし、視察もしていないということは、急きょ、帰国命令でも出されない限り考えにくい。

 そうだというのであれば、こちらもその旨の記録が残っているはずである。そもそも審議官クラスが博覧会や会議で出張し、出張目的の行事で講演も会談も何もしないということは筆者の知る限り聞いたことがない。

 大臣の名代での出席といった場合であっても、少なくとも会議などの全日程をこなし、主催者や現地政府関係者に挨拶、懇談などは行う。

 こちらも当該出張に関する公文書を示せば明らかになる話であり、中途半端な回答文書では疑惑は強まりこそすれ、晴れることはあるまい。

 加えて、出張は必要な日程に限って行くというのが原則であり、特段要務がない限り、ある程度の期間の前乗りはありえない。

 前乗りをする場合は、必ず行事の主催者との懇談や会食、政府関係者との面談などを入れるのが通常である。これについても復命書等から明らかになる話である。

 さらに、宿泊施設に関し、この事案では現地のアパートを借りているが、宿泊は必ずホテルでなければならないというわけではないものの、利害関係者を含む民間人と同泊というのは、国家公務員倫理法に照らして疑義が生じるおそれがあり、ありえないし(たまたまホテルが一緒というのはありえても)、現地の在外公館が「便宜供与」という形で日本政府の定宿を押さえるというのが通常である(会場近くで確保が難しい場合は、何らかの形で送迎も確保されるということもありうる。もっとも、オースティンについては領事館がなく、在外公館が保有する館用車は使えないので、ハイヤーかタクシーということになるだろうが)。