こうした素晴らしい前例も含め、日本はインドで4番目に大きな投資家ということができます。マルチとスズキのコラボレーションがインドで知名度を高めたことに加えて、後述しますが、デリーメトロ・プロジェクトと900億ドルのDMIC(デリー・ムンバイ産業大動脈)プロジェクトも顕著な成功例といえるでしょう。これらは、インドへの日本の投資の将来の方向性に大きな示唆を与えるものだと思います。
こうしたプロジェクトの多くは、JBICによって資金提供されています。また、同行が2018年に実施した日本製造業に関する調査でも、インドは最も魅力的な投資先の一つであるという結果が示されています。
インドへの投資は産業という観点でも、また地域という観点でもこれまで以上に多様化しています。自動車、ITといった業界は以前から海外投資が盛んでしたが、近年では、特に保険部門など金融サービスへの投資が増えており、東京海上日動火災保険、SOMPOホールディングス、日本生命保険などが積極的に参入しています。
農業も大きな関心を集めている産業の一つです。この3年間に大規模な投資が行われており、住友化学、ヤンマー、クボタなどの企業が存在感を高めています。不動産にも触れておきましょう。住友不動産が商業地域に、住友商事と三菱商事が住宅に投資するなど、不動産は新たなコラボレーションの分野として浮上しています。
これらを含め、今日、日本のインド進出企業数は、2014年の1156社から2018年には1441社にまで増加しています。インドへの対外直接投資残高も、2013年末の137億ドルから2017年末に222億ドルとなっています。
今後の日印関係は、アメリカと中国の関係悪化によって、重要性を増したインド太平洋地域における重要なパートナーシップとして、ますます存在感を高めていくことでしょう。このパートナーシップは、経済的関係に留まるものではありません。たとえば地域間協力、海上安全、気候変動などへも広がり、両者の協力はますます親密かつ不可欠なものになっています。
かつてはインド国内の州を移動するたびに関税がかかるほか、それ以外に税の仕組みが複雑で、インドへの進出をためらう企業も少なくなかった、と聞いています。
関税に関しては以前より格段に把握しやすく、またビジネスをしやすい形に改められています。2017年に導入されたGST(Goods and Services Tax)は、インド史上最大かつ最も重要な税制改革でした。
旧税制では、州と中央政府という2つの課税主体があり、さらには、州ごとに異なる税率で、サプライチェーンのさまざまなプロセスにおいて、複数の間接税を徴収しており、場合によっては、税が重複して徴収されることもあったのです。
GSTの導入によって、中央税、州税の17本の間接税が一括して束ねられ、複雑な租税構造が大きく簡素化されることになりました。運用面での課題がまだあるとはいえ、これで事業環境は大幅に改善しました。実際、小売業や消費財メーカーの成長と拡大が顕著です。
こうした状況を踏まえて、今後の日印のコラボレーションはどのように進めるべきでしょうか。
日本とインドのコラボレーションが可能な領域として、次の4つが挙げられます。
(1)インフラ
(2)アフリカへの共同投資
(3)デジタルコネクティビティ
(4)スキル開発