女性のファッショントレンドの移り変わりは、目まぐるしい。森にいそうなファッションを身につけた「森ガール」、華やかなアウトドアウェアで山に登る「山ガール」、おしゃれカメラを首にかけた「写ガール」、自宅生活にとことんこだわる「家ガール」など、ここ数年、日本の至るところで様々な「ガール」が棲息していることが発見された。
そしてまたもや、ここに来て新種が現れた。その名も「林業女子」。森ガールを草食系とするなら、さしずめ林業女子は肉食系か。
「就農に走る若者、それを採り上げるメディア」という構図が、一種トレンドの様相を呈して久しいが、現実はそう甘くない。農林水産業全体を見ると、従事者の高齢化に伴ってその数は大きく減少している。
唯一気を吐いているのが林業である。林業に従事する若年者(35歳未満)だけが、1990年の調査以降増加しているのだ。一部の地域では若者の新規就業により、林業就業者全体の平均年齢が下がっているという。
林業を身近に感じてもらう取り組みは、様々な形で広がりを見せている。その1つが、2010年7月、京都大や京都府立大の学生たちが中心となって発足した「林業女子会」だ。
林業の体験談を同世代に知ってもらうため、フリーペーパーの発行や、伐採、下草刈りの体験会を開催するなど、地元の林業促進を目的とした活動を展開している。
「多くの人に林業の魅力を伝える」をテーマに掲げる彼女らの活動は全国へと広がり、岐阜、静岡、東京、栃木でも支部が発足。昨年、林野庁の林業白書にその活動内容が採り上げられるなど、“官”からの注目も高まっている。
政府は2009年12月に発表した新成長戦略で、林業を成長産業の1つと位置づけている。現在の木材自給率、つまり国産材を国内で消費する割合が約20%強に止まっている現状を鑑みて、「10年後、50%に拡大」という目標を掲げている。
また、円高の影響で、安価で良質な海外木材の輸入量が増えたことから、国産材の価格下落が止まらず、政府は国産ヒノキやスギを家具や住宅に使用するよう奨励している。
農林水産省の発表では、国産材を利用して住宅を建てた人には、家具や家電、地域通貨などと交換できる独自ポイント(1ポイント=1円程度を想定)を付与する制度創設に動いている。地域経済を支えるための一策と言えよう。
その昔は、汗をかき、泥にまみれる仕事が若者に嫌われ、農林水産業にとって後継者の確保は死活問題だった。確かに、2010年の林業産出額を見ると、ピーク時(1980年)の36%にまで落ち込み、現在も縮小傾向にある産業であることは否めない。
ただ、“自然”“環境”といったキーワードや、地球を肌で感じる仕事に魅力を感じる若者が増えているのも事実。単純にファッション用語であった「森ガール」とは異なり、女性目線から林業の魅力をアピールする林業女子会の盛り上がりを見ても、その本気度が窺える。森林・林業振興への貢献に期待がかかる。
(筒井健二/5時から作家塾(R))