入社2年目にして、
「ビッグ・ビジョン」の洗礼を受ける
もちろん、入社2年目のペーペーですから、会食の際には、隅っこの席に座って、交わされる会話を聞くだけです。しかし、そこでトップ層が語り合っていた話の内容がとにかく面白かった。
世界のタイヤ業界がどんな状況にあるか? そのなかでブリヂストンはどうやって成長し、生き延びていくことができるのか? 普通ならば、入社2年目の若造が触れることができないような、壮大なビジョンが語り合われたのです。
ブリヂストンは当時、日本ではすでに「超優良企業」の仲間入りを果たしていましたが、世界規模で見れば、世界シェア10位の”極東のちっぽけな存在”でしかありませんでした。そして、”小粒で超優良企業”ということは、タイヤ業界において、とてつもなく危険なことだったのです。
タイヤは国際規格商品ですから、国境などあってなきがごとし。参入障壁など一切ありませんから、世界中のメーカーが”食うか食われるか”の熾烈な戦いを繰り広げるタフな世界です。そして、”食われる”のは事業規模で劣る者。つまり、”小粒で超優良企業”であるブリヂストンは、世界にひしめくグローバル・ジャイアントにとっては、「食べやすく、美味しい会社」にほかならなかったのです。
もちろん、”食われる”のを座して待つわけにはいきません。
だから、生き残りをかけて、海外に進出して、他社を”食っていく”しかない。この大きなビジョンのもと、グローバル・ビジネスの先兵として設立されたのが、タイ・ブリヂストンだったのです。シンガポールにも進出したのですが、間もなく撤退を余儀なくされましたから、残ったタイ・ブリヂストンへの会社の期待は非常に高いものでした。