単なる「優秀な部下」にとどまるか、「参謀」として認められるか──。
これは、ビジネスパーソンのキャリアを大きく分けるポイントです。
では、トップが「参謀」として評価する基準は何なのか?
それを、世界No.1企業であるブリヂストン元CEOの荒川詔四氏にまとめていただいたのが、『参謀の思考法』(ダイヤモンド社)。
ご自身が40代で社長の参謀役を務め、アメリカ名門企業「ファイアストン」の買収という一大事業に深く関わったほか、タイ法人、ヨーロッパ法人、そして本社CEOとして参謀を求めた経験を踏まえた、超実践的な「参謀論」です。
新型コロナの影響で危機的状況に立たされる多くの企業においてこそ、トップの意思決定や戦略実行を支える「優れた参謀」の存在が強く求められています。
本連載では、同書の内容を抜粋しながら、激烈なグローバル競争の真っ只中に立ちつつ、バブル崩壊、リーマンショック、東日本大震災など数々の危機を乗り越えてきた「名経営者」にしかできないアドバイスは、きっと多くのビジネスパーソンの参考になるに違いありません。

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単なる「部下」にとどまるか、「参謀」と認識されるか?

「参謀」が務まるかどうか?
 これは、ビジネスパーソンのキャリアを大きく左右するポイントです。企業に勤めると、トップ以外は誰もが「部下」としての立場にたちますが、単なる「優秀な部下」にとどまるか、「参謀」として認識されるかによって、評価のされ方に大きな差が生まれます。「部下」と「参謀」の間には、越えがたいほどの隔たりがあるのです。

 私自身、株式会社ブリヂストンで、課長、部長などの役職を経て、タイ法人、ヨーロッパ法人、そして本社の社長を任されてきましたが、いま振り返れば、それぞれのポジションで、信頼できる「参謀」を求めていました。

 もちろん、社内には「参謀」という役職などありませんし、「あなたに参謀になってほしい」などと伝えるわけでもありません。組織運営などの問題で判断に迷ったり、困難に直面したりしたときに、意見を聞きたくなる、頼りにしたくなる人材を、心の中で「参謀」と位置づけていたのです。平たく言えば、その人物の「見識」を高く評価していたということです。

 そして、私が「参謀」と評価していた人々は、実にさまざまな個性、経歴の持ち主ではありましたが、共通する「思考法」があったように思います。「モノの考え方」「仕事に向かう姿勢」「人との向き合い方」など、根本的な部分で同じようなスタンスに立っていたように思うのです。

 それは、どのような「思考法」だったのか?
 それを明らかにしたいと思い、『参謀の思考法』を書き始めました。ブリヂストンという会社に身を置いて、四十余年にわたってグローバル・ビジネスの最前線で戦ってきた私の経験を踏まえながら、「参謀の思考法」を描き出すことができれば、現役世代の参考にしていただける部分もあるはずと考えた次第です。

荒川詔四(あらかわ・しょうし)
世界最大のタイヤメーカー株式会社ブリヂストン元代表取締役社長
1944年山形県生まれ。東京外国語大学外国語学部インドシナ語学科卒業後、ブリヂストンタイヤ(のちにブリヂストン)入社。タイ、中近東、中国、ヨーロッパなどでキャリアを積むなど、海外事業に多大な貢献をする。40代で現場の課長職についていたころ、突如、社長直属の秘書課長を拝命。アメリカの国民的企業ファイアストンの買収・経営統合を進める社長の「参謀役」として、その実務を全面的にサポートする。その後、タイ現地法人社長、ヨーロッパ現地法人社長、本社副社長などを経て、同社がフランスのミシュランを抜いて世界トップの地位を奪還した翌年、2006年に本社社長に就任。世界約14万人の従業員を率い、2008年のリーマンショック、2011年の東日本大震災などの危機をくぐりぬけ、世界ナンバーワン企業としての基盤を築く。2012年3月に会長就任。2013年3月に相談役に退いた。キリンホールディングス株式会社社外取締役、日本経済新聞社社外監査役などを歴任。著書に『優れたリーダーはみな小心者である。』(ダイヤモンド社)がある。