「ビッグ・ビジョン」が、
現場の仕事に「意味」を与える

 そして、タイではすでに、ブリヂストンよりも事業規模がはるかに大きいグローバル・ジャイアントのファイアストンが先行して進出しており、ほぼ独占に近いシェアをとっていました。そこに極東の小さなブリヂストンが、いわば”殴り込み”をかけたわけです。

 ところが、世界は甘くない。

 その翌年には、当時、世界トップシェアを誇っていたグッドイヤーまでもがタイに進出。先に陣地をとっているマグロを相手に、イワシが戦いを仕掛けているところに、「その陣地を寄越せ」とばかりに、クジラが割り込んできたようなものです。

 本社では、「タイはもうダメだ。ファイアストンとグッドイヤーを相手にして勝ち目はない」などという声も出ていました。しかし、ここでファイアストン、グッドイヤーに勝てないようでは、いずれ食われる。なんとしても勝たなければならないんだ。さて、どうするか……。

 このような話を、トップ層は、入社2年目の私の前でも包み隠さず話してくれました。さらに、タイで、グローバル・ジャイアントに勝つために戦略・戦術についても議論を戦わせていました。

 こうした議論に直接触れることで、私は、日々、自分が這いずり回っている現場の仕事の「意味」を理解できるようになるとともに、自分が現場で果たすべき役割についても考えさせられるようになっていきました。