そして、D社長は即座にうちわを全部落札した。その後B総務課長に尋ねた。

「君以外に倉庫の鍵の保管場所を知っている者はいないのか?」
「もしかして…Aさん?」

 B総務課長の脳裏に、Aの姿がよぎった。なぜなら先日、自分がAに鍵を託して倉庫整理を途中で抜けたからだ。しかしAが絶対に犯人であるという確証がないのでD社長には黙っていた。

総務課長に問い詰められたA
社長も大激怒で解雇寸前!

 大騒ぎになっているとはつゆにも思わないAは、出社後部署がざわついているのが気になり、「今日は朝から騒がしいですね。どうしたんですか?」と、顔を合わせたB総務課長に尋ねた。

「A君、大変だ。倉庫からC子さんのうちわが全部なくなって、ネットオークションで売られていたんだよ。D社長がそれを偶然見つけて激怒しているが君、心当たりはないか?」
「えっ?」

途端にAの表情が変わった。B総務課長はその変化を見逃さなかった。

「まさか君が出品したのか?」

 Aは出品したことについては素直に認めたが、「だってあのうちわはどうせゴミなんでしょ?課長は業者を呼んで処分するって言ってたじゃないですか!それをもらって何が悪いんですか?」と言い返した。

「予定が変更になり、D社長が乙社長にプレゼントすることになったんだ。それに私は、うちわを君にあげるなんて一言も言ってないぞ」
「じゃあ、僕はドロボーってことですか?」

 B総務課長から犯人はAだったとの報告を受けたD社長はますます頭に血が上り、机をたたいて叫んだ。

「会社のモノを盗んだ上に、売り飛ばして儲けようとするとは何事だ!Aは今すぐクビだ!!」
「そんなこと急に言われても…。私も判断に困るので、せめてE社労士に相談してから決めましょう」

 B総務部長は何とかD社長をなだめると、E社労士に面会を申し込んだ。

芸能事務所との契約も考慮すべし
Aが犯した問題点

 その日の午後、B総務課長は、甲社を訪れたE社労士にAの件に関する詳細を話し、今後のAに対する処遇と会社の対応についてアドバイスを求めた。

 説明を受けたE社労士はまず、今回の事件でAが犯した問題点を指摘し、次に会社が行う策のアドバイスを行った。

<Aが犯した問題点>
(1)会社の所有物であるC子のうちわを「どうせゴミで捨てるから」と勝手に判断し、会社の許可なく自分の物にした。
(2)(1)で得たうちわをネットオークションに出店し、売上代金を自己の利益にしようとした。
(3)そもそもうちわはネット等で販売できるのか?転売禁止の契約になっていた場合、契約違反により違約金が発生する場合がある。