「買う」なら「長く住む」のが前提に
「いずれ売る」なら「郊外」は不利

 ところが、現実には郊外で「買う」ことは、おすすめしない。テレワークをきっかけに、「もうひとつ隣の駅でもいいか」と妥協するぐらいはいいかもしれないが、「思い切って、倍の通勤時間がかかる、駅から距離のある物件を買おう」と決断するのには慎重になってほしい。

 まず、そもそもテレワークがこれから先、ずっと続くかどうかはわからない。今は、月に4回の出社で、残り16日はテレワークという人がいたとしよう。しかしコロナが収束したら、5年先10年先も同じ頻度でテレワークをするかどうかはわからない。となると、今郊外に家を買えば、将来、長い通勤時間を強いられることになる。もしかすると、転職だってするかもしれない。そうすれば、働く環境が変わる可能性もある。

 パーソル総合研究所の「新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査」によると、関東のテレワーク実施者比率は25.7%、東京圏に限っても41.1%となっている。今、自分はテレワークをしていても、みんながテレワークをしているわけではないのだ。

 残り6割の人は、「テレワークしたくてもできない仕事」に従事している。そうした人からすれば、都心駅近は魅力的であるから、将来売却するときも人気が高く、中古流通価格も落ちにくい。一方で、郊外で駅から遠い物件は、こうした人には魅力が低いため、これまで同様経年により売却価格は低くなってしまう可能性がある。

 新築にこだわらなければ、都心で中古物件を買うという選択肢もある。距離で妥協しなくとも、築年で半額ぐらいまで購入価格は節約できる。また、ずっと賃貸という選択肢もある。

 そして、人生100年時代。憧れの家を買って家族で暮らし、老後を迎えて子どもたちが巣立つと、広い住居はメンテナンスが大変になる。長い老後は、「一戸建てを売って、夫婦でマンションに暮らす」といった住み替えも考えたい。となるとできれば、「将来あまり価格が落ちず、できるだけ高く売れる」家を買った方が良い。

 こうしたことからも、都心・駅近と郊外・駅遠では「売ったときに高く売れる」のは前者という傾向は続くだろう。