ジョンソン首相EUとの通商交渉が難航する英国。ジョンソン首相の誤算とは Photo:WPA Pool/gettyimages

他の欧州諸国と比べても
悪化が酷かった英国景気

 新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、各国の2020年4-6月期の実質GDPは腰折れしたが、欧州では英国の内容が特にひどいものとなった。具体的には、英国の4-6月期の実質GDPは前期比20.4%減となり、コロナ禍がとりわけ深刻とされるスペイン(同18.5%減)やイタリア(同12.4%減)よりも下げ幅が大きかったのだ。

 良くも悪くも、英国経済は首都ロンドンを中心に回っている。そのロンドンで新型コロナウイルス感染拡大の抑制を目的に実施した都市封鎖(ロックダウン)が長引き、経済活動の停滞が続いたことが、GDPの大幅な減少を招いた。主力の金融業や法務・会計・コンサルなどの関連産業に加えて、建設業が不振を極めたようだ。

 もっとも月次の実質GDPは4月を底に増加に転じており、景気は最悪期を脱している。小売数量など実質的に「V字回復」した指標もあるが、反面で主力のサービス業の活動水準はコロナ前の8割程度にとどまっている。また、製造業の方が回復は先行しているものの、英国の場合はそもそも製造業の景気けん引力が弱いという問題がある。

 これまで英国は欧州連合(EU)のマネーセンターとして、グローバルなヒト・モノ・カネの流れを活力に、経済の成長を謳歌してきた。それが今年1月末のEU離脱で潮目が変わり、さらにコロナウイルスの世界的な感染拡大(パンデミック)が追い打ちをかけるかたちで、第2四半期のGDPの歴史的な減少が生じたと言えよう。

経済対策を待ち構える
「人手不足」という高い壁

 世論調査会社ユーガブ(YouGov)によると、ジョンソン政権の支持率は最新8月15-17日調査で29%まで落ち込み、直近の最高値をつけた3月末時点と比べると20%ポイント以上も低下している。二転三転したジョンソン首相の新型コロナ対応を有権者は厳しく評価しており、保守党の支持者からも否定的な声が強まっている。