もっとも、抗体検査は参入障壁の低さから取り扱う業者が急増し、すでに価格が下がってきて、投げ売りが始まっているというが、「入国者に対してPCRの陰性証明を求める国が増えており、ビジネス渡航が徐々に再開される今後、ますますニーズは高まる。特に高所得者が多く住むエリアでは、価格をつり上げる診療所も出てくるだろう」とA氏は言う。
多くのまっとうな医者は、コロナによる患者減に必死に対処している。その一方で、一部の医者がコロナ検査バブルとばかりに暴利をむさぼるような構造はなぜ生まれたのか。
東京都内の大学病院でコロナ検査に携わる病理医のH医師は、「いまだに医師のオーダーした検査が通らないケースがあるなど、感染者数に対して十分なキャパシティーの検査態勢を国が整備できていない状況がますます不安をあおり、安心のためのコロナ検査に人々を駆り立てる遠因になっている」と指摘。
「ぼったくりにも近い診療所や、医療とは何の関係もない、コロナバブルに乗りたいだけの業者をもうけさせることに、国が一役買ってしまっている」と憤る。
コロナで食い詰めた医者が、同じくコロナで困窮し不安に駆られる人々を、「陰性証明ビジネス」で食い物にして偽りの安心を与えた揚げ句、感染拡大の片棒まで担いでしまう――。