新型コロナウイルスまん延が始まってはや半年が経過した。通勤車の中には、感染リスクを少しでも下げようと電車やバスなどの公共交通機関の利用を控え、自家用車などで通勤する人も増え始めた。そこで、それに伴う費用はどの程度なのか、試算を試みた。その上で、その費用を企業が手当として支給するべきなのかについても検証してみたい。(信金中央金庫 信用金庫部 上席審議役 佐々木城夛)
浸透するテレワーク
23区内は普及進む
8月末に、ホンダやソフトバンク、NTTグループ、富士通などで、在宅勤務手当やリモートワーク手当を支給する旨が報じられた。
2012年時点のわが国のテレワーク導入率は11.5%と、先進諸国に比べ低水準にとどまったため、16年6月に、普及促進に向けた2020年までの政府目標が設定された。中身は、いずれも20年までに「導入企業を2012年度比で3倍(=34.5%)」「週1日以上終日在宅で就業する雇用型在宅型テレワーカー数を全労働者数の10%以上」とするものだ。
5月25日の緊急事態終了宣言同日から6月5日までに実施された内閣府による調査では、今般のコロナ禍でテレワークを実施した割合が34.6%に達し、前者の目標にほぼ達した事態がうかがえる。内訳では、過半数に達した東京23区の数値が三大都市圏以外の北海道および36県の倍以上に及んでいる[図表1]。
東京商工会議所が、上記調査と期間を重複させる形で5月29日から6月5日にかけて会員企業に実施した調査でも、テレワークの実施割合が67.3%に達している。内訳では、大企業ほど実施率が高くなるという従業員規模との相関が認められるものの、従業員30人未満の企業でも45.0%が実施し、上記同様に政府目標を超える数値となった。
2つの調査からは、中小企業・小規模事業者を含め、テレワークが短期間に社会に浸透したものの、地方部の普及になお課題を残す実情がうかがえる。