――安心感と信頼感を与えるために、上司や先輩は何をすべきでしょうか?

 おすすめなのが、受信型のコミュニケーションです。どうしてもマネジメントというと上から下へ、分かっている人間が分からない人間へという発信型リーダーシップになりがちです。それに対し受信型のコミュニケーションは、相手がどういう人間かに関心を向け、考えや思いを聞いて、コンディションや頑張る姿勢を見ることで、強みや得意なこと、ありたい姿を知っていきます。個性と多様性を尊重し、それを否定せずに受け止めることで、新入社員も「分かってもらえた」「何でも話せる」と安心感と信頼感を持つようになります。

 具体的な方法は、現場の忙しさや新人の特徴に応じて最適なものを選びましょう。毎日昼休みに5分だけ話すペアもいますし、1週間に30分~1時間ほど話すケース、職場のメンバーもいるミーティングの際に新人コーナーを作って15分~30分対話するケースもあります。

 受信してばかりだと仕事が進まなくて困ると思いますので、基本は普段通りの指示・命令も含めた発信型コミュニケーションで進めながら、受信を意識して増やしてみましょう。「今日のミーティングは聞き役に回ろう」と決めるだけでもいいのです。

 上司世代の皆さんはまず、無理をしないことが大切です。新人も慣れないことをしているように、上司世代も受信型コミュニケーションには慣れていないはずです。やっぱり難しいな、なぜこんなことをやらないといけないのかと思うと、ますます嫌になってしまいます。だから、無理せず少しずつできるようにしましょう。

VUCAの時代でも
新人を成長させる9つの行動指針

――現在は「VUCAの時代」と呼ばれるように、変化が多く、不確実性の高い曖昧な時代です。そうした答えのない時代における新人教育のコツはありますか?

 テレワークやコロナは、まさにVUCAの考え方につながる環境といえます。そんな誰も答えの分からない環境下では、まず自分で考えてやってみる、試行錯誤の経験値をたくさん積ませることが大切です。

 試行錯誤をしてもすぐ結果が出るわけではなく、積み重ねなければいい結果は出ません。ですから、最初は結果を見ず、やろうとしている姿勢を見ながら、新入社員を伴走型、支援型で支えてほしいと思います。