竹中氏がブチ上げた
ベーシックインカム論に波紋
9月14日、自民党総裁選で菅義偉氏が勝利し、翌々日の9月16日、菅義偉内閣が発足した。総裁選にあたって公表された「政策パンフレット」によれば、「人生100年時代の中で、 全世代の誰もが安心できる社会保障制度を構築」するということであった。
具体的な方法についての記述はないが、「これまでのしがらみを排して制度の非効率・不公平を是正」し、「次世代に安心の社会保障制度を引き継げるよう改革」するということであった。
新内閣発足から約1週間が経過して、具体的な方針が少しずつ明らかになりつつある。いきなり浮上してきたのは、経済学者・竹中平蔵氏の「ベーシックインカム」論だ。現在のところ、9月23日にTBS『報道1930』に出演した竹中氏が語った内容に過ぎず、菅内閣の方針として正式に採用されているわけではない。
とはいえ、日本の政治と経済に巨大な影響力を持つ竹中氏の発言には、注意を払う必要があるだろう。ベーシックインカム制度には確かに、菅首相がいう「しがらみを排し」「制度の非効率・不公平を是正」する面が含まれている。しかも、生活保護のように申請手続きや資産調査や扶養照会等による可否判断を伴うわけではない。
生活保護の特徴の1つは、現金・現物による支援とケースワーカーによる人的支援がセットになっていることだが、ベーシックインカムは現金給付だけだ。「若くて働けるはずだから働きなさい」という就労指導がついてくるわけではない。
しかも、誰もが受け取る給付である。生活保護費をパチンコやカジノで消費すると、「生活保護なのに」という非難の対象となり得る。生活保護のように受給資格が問われる給付は、「私は受けていない生活保護を、あなたは受けている。だから私はあなたを非難する資格がある」という考え方につながりやすい。