イングランド銀行英国経済とは構造的に相容れないマイナス金利政策の導入を、英国中銀が検討する理由とは Photo:123RF

英国までなぜ?
BOEがマイナス金利導入に言及

 英国の中銀であるイングランド銀行(BOE)は、9月17日に金融政策委員会(MPC)を開催し、政策金利を既往の年0.10%に据え置き、資産購入プログラムを7450億ポンド(約100兆円)で維持した。

 それと同時にBOEは、いわゆる「マイナス金利政策」の導入に関して、金融監督当局である健全性監督機構(PRA)と調整を開始すると発表した。

 コロナ禍での金融緩和の次の一手として、BOEのベイリー総裁はマイナス金利導入の可能性について、これまでたびたび言及してきた。またベイリー総裁は7月上旬、ロンドンの金融街であるシティの金融機関に対して書簡を送り、マイナス金利に伴い金融機関で予想される悪影響に関して警告を行うなどして、地ならしに努めてきた。

 9月MPCでの発表を受けて英国の長期金利は一時的に反応したが、結局はボックス圏での推移となっている。他方でポンドの対ドルレートは、MPC直後はそれほど反応しなかったが、その後は欧州連合(EU)との通商協議の難航や新型コロナウイルスの感染拡大などが嫌気されて、軟調に推移している。

 マイナス金利政策が持つ景気刺激効果は疑わしく、むしろ金融機関の収益悪化という無視できない深刻な副作用が生じることは、これまでの日本銀行や欧州中央銀行(ECB)の経験から明らかである。にもかかわらず、BOEは金融緩和の次の一手としてマイナス金利政策の導入を考えているわけだが、その政策意図がどこにあるのか掴みにくい。

通貨高の抑制には一定の効果も
金融機関の収益は確実に悪化

 日欧の経験から言えることは、貸出を増やさない金融機関にペナルティを課すマイナス金利政策は、金融機関の収益を着実に悪化させるということだ。マイナス金利政策の導入を主導した日銀の黒田総裁自身、2017年11月のスイスでの講演で、過剰な金利の低下が金融機関の金融仲介機能を損なう可能性に言及している。