街のコミュニティーの一翼を担えるような店舗に
「支那ソバ 玉龍」はカウンター席に加え、テーブル席もあり、顧客は家族層も多い。現在(2020年9月末)は、平常時の7~8割に客足が戻ったものの、小さい子どものいる家庭は、コロナ禍で外食を避ける傾向があり、土日の売り上げ減がボディブローのように続いているという。
「この状況を恨んで世の中に唾を吐いてもどうしようもないことだし、みんなと一緒に闘っていかなきゃいけないわけで…(外食の)ラーメンは嗜好品かもしれないけど、とにかく、『店』というコミュニティーの場をなくしちゃいけないと思いました。ラーメン店でご飯を食べるだけではなく、お客さま同士もつながる“憩いの場”を継続したい。完全な非接触型で会話もいっさいナシにすると、“憩いの場”としての役割がなくなります。感染対策を確実に行ったうえで人にかかわり、心に寄り添っていく――それをいっそう意識する時代がやって来たと思います」
東野さん自らが一品一品調理し、接客する姿は常に「笑顔」とともにある。常連客も多く、お腹(なか)と心を満たす“近隣住民と一体のお店”を目指していることが分かる。(修業時代の)師匠に、「店舗経営は社会奉仕」と言われ続けたことも、東野さんの考え方に反映しているようだ。
「それぞれのお店に元気がないと、街は力をなくしていきます。この周辺でも、コロナによって閉店せざるを得なかったお店があります。みんなの顔が曇るようなときこそ、あっけらかんとした僕の出番(笑)。だから、これからの飲食店のあり方を真剣に考えました。クールに営業するのも手かもしれませんが、ちょっとした一言で人の心が明るく変わることを大切にしたい…きれいごとばかりでなく、経済的に厳しくなって、給付金や補助金をマックスでお願いしましたけど、ぶっちゃけ、焼け石に水。ただ、このきつい状況下で、国もある程度のお金を出しているわけだから、それに応えなきゃいけないとも思っています。街の小さなラーメン店ですけど、コミュニティーの一翼を担えるくらいに頑張らないと」