「明日のカタチ」をいちばんに聴いてほしい人

 ラーメンならオーダーされたものを提供すれば、対面する人(お客様)と同じ空間で満足感を共有できる。しかし、不特定多数を相手にする音楽にはオーダーがなく、聴く人の数だけとらえ方が異なり、同じ人でもそのときの気分や状況によって感想が変わっていく。ともすれば、創り手の思いが伝わりづらいエンターテインメント市場のなかで、東野さんは、メッセージ性のある『明日のカタチ』をどのような人に聴いてほしいのだろう。

 「もちろん、いまの時代に閉塞感を覚え、疲れ気味な人に聴いてほしいですが、いちばん聴いてほしいのは、生きるエネルギーが強く、誰かに手を差し伸べられるような人たちです。そうした人がこの曲を聴いて「ん?」と思い、何かの行動をしてほしいですね。会社の経営者とか、グループや組織のリーダーとか…総理大臣にも(笑)。お金も時間もあって、豊かな生活ができて、助けを必要としていない人が、生きづらさを感じている人や心の満たされていない人、本当に助けを求めている人の存在に気づき、『一緒に歩もうよ』と手を差し伸べる社会が理想的。ミュージシャンやタレントの仲間も含め、僕の周りにも自律神経を患っている人がたくさんいます。以前、僕の店で働いていた従業員もそうで、『高校生の頃からずっと』と言っていました。つまり、青春時代のすべてを心身の不調とともに過ごしたわけで…そうした人たちは、うまく動けない自分を責め、誰かに何かを言われれば言われるほどつらくなっていく。周りの圧力が強すぎて、『何も言わないでほしい、放っておいてほしい』と思いながら実は心の中では常に助けを求めて泣いているんです。周囲の人ができる何かはきっとあるはずです」

 たとえば、楽曲「BREAK DOWN」(アルバム「Human Noise」収録)では、希望のないことが希望に向かう唯一の力で、「Realize」(アルバム「Key Stone」収録)では、もろい心こそが明日への確かな地図だと、東野さんは歌う。ラーメン店を経営しつつ、音楽活動を続ける力の源と明日への地図は何か。

 「僕自身もよく分からないんですけど(笑)、僕を動かしているのは、“自分に対しての決め事”かな。デビュー時に、わざと十字架を背負いました。それは、アルバムにアルファベット順のタイトルをつけて26枚出すというものです(編集部注:現在、「M」までリリース)。だから、音楽活動の方は、僕にとってはその道程でしかないのです。粛々と自分のライフワークに向き合いながら、社会情勢に合わせて歌詞を書き、メロディーを創って、『みんなを元気にしたい』ということをずっと考えています」

東野純直さんが語る、コロナ禍でのラーメン店と「明日のカタチ」

東野純直23th ニューシングル
「明⽇のカタチ」
\1,650(税込み)
発売元:Star Radio Records 
販売元:キングレコード

前作シングル「明⽇のシルシ」に続く、『「明⽇」3部作』の第2弾。混沌とした2020年のなかで、忘れてはいけない個性や勇気・希望の大切さをメッセージする歌詞、誰もが口ずさめるメロディーが印象的な楽曲。